発電効率8.4%の透過型亜酸化銅太陽電池を開発:東芝 透過型亜酸化銅太陽電池
東芝は、タンデム型太陽電池向けに、発電効率8.4%の透過型亜酸化銅太陽電池を開発した。同電池をトップセルにしたタンデム型太陽電池をEVに搭載した場合の試算では、充電なしで1日当たり約35km走行できる。
東芝は2021年12月、タンデム型太陽電池向けに、発電効率8.4%の透過型亜酸化銅(Cu2O)太陽電池を開発したと発表した。同社によると、世界最高の発電効率だという。
タンデム型太陽電池のトップセルに用いるCu2Oは、Cu2Oの結晶中に生成される酸化銅(CuO)や銅(Cu)などの不純物が、発電効率や光透過性を低下させる原因となっている。
東芝は、Cu2O発電層中の微量な不純物をX線回折法によって検出し、数値化した。そして不純物が最小になる成膜プロセス条件を特定することで、優れた発電特性と光透過性を併せ持つ、透過型Cu2O太陽電池を開発した。
発電効率の試算値が世界最高値を上回る
この透過型Cu2O太陽電池を、発電効率25%のシリコン(Si)太陽電池に積層した場合、全体の発電効率が27.4%に達すると試算した。この値は、2021年12月時点でのSi太陽電池の世界最高効率26.7%(同社発表による)を上回る。
また、今回開発した電池をトップセルにしたタンデム型太陽電池を、EV(電気自動車)に搭載した場合の試算では、充電なしで1日当たり約35kmを走行可能であることが示された。
同社は、今後も新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託事業として、Cu2O/Siタンデム型太陽電池の目標値となっている、発電効率10%に向けて開発を進める。
さらに、東芝エネルギーシステムズと共に、量産型のSi太陽電池と同サイズの大型Cu2O太陽電池の開発に着手した。2023年度に外部評価用サンプルの供給を開始し、2025年度に実用サイズのCu2O/Siタンデム型太陽電池の製造技術を確立する計画だ。
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