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ホットキャリアによるマイコンの不良ハイレベルマイコン講座【ホットキャリア編】(3/4 ページ)

すでにマイコンを使い込まれている上級者向けの技術解説の連載「ハイレベルマイコン講座」。今回は、マイコン内のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ:Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:以下MOS)で生じる不良の1つ「ホットキャリア注入(Hot Carrier Injection:以下HCI)」について、その発生原因やマイコンに与える影響などを解説する。

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マイコン内でHCIが発生する場所

 マイコン内部のロジック回路などでは、LDD構造のMOSが使われているため、HCIによる不良は発生しない(図6


図6:マイコンの内部構造
STM32F429リファレンスマニュアルから抜粋[クリックで拡大]

 そのため、HCIの不良が発生する回路は、LDD構造を使えない回路になる。マイコンメーカーによって製造工程やMOS構造が異なるため、一概にはいえないが、例えばアナログ回路や汎用IOのドライバーMOSなどが挙げられる。

 アナログ回路でLDDを使うと、チャネル領域にイオン濃度の異なる領域が存在するため、アナログ特性を調整するのが難しい。よって、一般的にアナログ回路ではSDが使われる。

 また、汎用IOのドライバーMOSは、LED(Light Emitting Diode)などをドライブする必要があるため、SDを使用する。LDDは、チャネル領域に流れる電流を制限することによってHCIの発生を防いでいるため、ドライブ能力が落ちて電流不足になる可能性がある。LDDで電流を制限する分、MOSを大きくすれば良いのだが、その場合コストアップにつながってしまう。

 さらに補足すると、HCIが発生するのは主にNMOSで、PMOSでは発生しない。厳密にいえば、理論的にはPMOSでも発生するが、実際には発生しない。プロセス開発時にHCIの耐性を試験する際は強制的に発生させるが、それ以外で発生することは、まずない。

 ここで誤解を招かないように再度、以下のことを指摘しておく。

  • HCIによる不良は、正常なマイコンを仕様内で使用すれば発生しない。
  • HCI不良への対策は、マイコンのプロセス開発時と製品開発時に施されており、製品として出荷されるマイコンでは発生しない。
  • 万が一発生した場合は、「何かしらの問題発生、または仕様外の条件で使用した場合」と考えられる。

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