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GaNパワートランジスタとはGaNパワー半導体入門(1)(2/3 ページ)

省エネ化/低炭素社会のキーデバイスとして、化合物半導体である窒化ガリウム(GaN)を用いたパワー半導体が注目を集めている。本連載では、次世代パワー半導体とも称されるGaNパワー半導体に関する基礎知識から、各電源トポロジーにおけるシリコンパワー半導体との比較まで徹底解説していく。第1回である今回は、GaNパワートランジスタの構造や特長、ターゲットアプリケーションなどについて説明する。

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GaNの構造:カスコード型

 AlGaN/GaN界面のバンド図(図2)を見ると、伝導帯がフェルミレベルより下に位置する領域で2DEGが発生する。これは高密度かつ高い電子移動度のキャリアであり低オン抵抗化に寄与する。構造自体にチャネル部を持つため、ノーマリオン特性をもつ。そのため、GaNをオフするためにはゲートソース間に負電位を与える必要がある。


図2:AlGaN/GaNヘテロ構造のバンド図[クリックで拡大]

 カスコード型では、低耐圧Si-MOSFETとノーマリオンのGaNを直列に接続し、GaNのゲート部をSi-MOSFETのソースに接続することでゲートソースに負電位を与え、ノーマリオフを実現している。

 GaNのみでのノーマリオフ動作が望まれていたが、2DEG部に電子が高密度で蓄積しているため、望ましいオンオフ性能を達成するにはゲート構造部に課題があった。この課題を克服する過程の中で、Siの力を借りてGaN特性を生かしたカスコード型が登場して製品化されている。


図3:カスコード型GaNパワートランジスタ[クリックで拡大]

GaNの構造:HEMT型

 ノーマリオフ動作を実現するためには、ゲート電圧ゼロで発生しているキャリアをゲート制御しなければならない。だが、デバイス内に電子がトラップすることで生じるスイッチング時オン抵抗増加(電流コラプス)の課題があり、望ましい性能を備えたノーマリオフ型GaNの登場には時間を要した。電流コラプスとは、スイッチングすることでオン抵抗に変化が生じてしまう現象である。しかし、近年この課題を克服して製品化されているHEMT型GaNが登場した。ゲート電極にp-GaNを加えゲート下の2DEG領域に電子とホールの移動度の差を利用した電導度変調を起こすことで、低オン抵抗を維持しつつ所望の特性を実現しているノーマリオフ型GaNである。

 p-GaNゲート構造にはオーミック接触(電流駆動)、ショットキー接触(電圧駆動)があり、主流は消費電力が少ないショットキー接触タイプである。


図4:AlGaN/GaNヘテロ構+p-GaN[クリックで拡大]

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