光ファイバー通信の概要と分光測定器の基礎:光スペクトラムアナライザーの基礎知識(1)(3/9 ページ)
今回の連載では分光測定器の1つであり、光ファイバー通信分野の開発では必須の測定器となっている光スペクトラムアナライザーについて解説していく。まず、「光ファイバー通信の概要」「分光測定器の基礎」「レーザ光を使う際の注意点」について説明する。
光ファイバー通信のメリット
有線通信では、電線を使って電気信号を送ることが長い間行われてきた。最近では下表に示すような理由により、公衆回線の伝送線路やデータセンター内の伝送線路は電線から光ファイバーに置き換わってきている。
低損失 | 平衡対ケーブル、同軸ケーブルのいずれと比べても低損失。伝送損失は0.2dB/km以下と小さい。 |
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広帯域 | 同軸ケーブルに比べて高い周波数の信号を伝送できる。光ファイバーで送る信号の周波数帯域は数百MHz〜THzとなっている。 |
細径・軽量 | 同軸ケーブルに比べて細径・軽量である。ファイバー1心の太さは、被覆を施して直径0.25mmであり、同軸ケーブルに比べて細い。このため多数の心線を束ねて敷設できるので有利となる。 |
無誘導 | 光ファイバーは金属でないので外部からのノイズによる電磁誘導などの妨害を受けることがなく、信頼性の高い通信が可能となる。 |
省資源 | 通信用の光ファイバーの原料は石英なため、同軸ケーブルの材料である銅に比べ資源量が豊富である。 |
表1:光ファイバー通信のメリット |
大容量の高速な情報伝送が必要なデジタル社会を実現するのに光ファイバー通信の特長が生かされることから、急速に普及が進んだ。
光ファイバー通信システムの構成
現在の光ファイバー通信システムの基本的な構造は、送信部で電子信号を光信号に変換して光ファイバーを経由し、受信部で光信号から電気信号に戻す仕組みになっている。伝送距離が長い場合は光ファイバーの途中に光ファイバー増幅器を挿入し、光ファイバーによる信号の減衰の影響をなくすようにしている。
双方向通信を行う必要がある場合は、2本の光ファイバーを使って上り信号と下り信号を伝送する仕組みとしている。
一般に通信システムで使われる光ファイバーは石英ガラスで作られていることから、遠距離通信を可能とするため石英ガラスによる吸収が少ない波長が通信に用いられる。
長距離伝送では損失の少ない第2の帯域(1.3μm)と第3の帯域(1.55μm)が使われている。現在使われている光ファイバーでは、光の強度が半分になる距離は第2の帯域では約10km、第3の帯域では約20kmとなっている。電気信号を送る同軸ケーブルでは約1?で信号の強度が半分になることと比較すると、光ファイバー通信の優位性が分かる。
光ファイバー通信が始まった1970年代半ばでは、第1の帯域(0.85μm)のレーザーダイオードが使われた。その後1980年代に第2の帯域のレーザーダイオードが登場したため、光損失の少ない伝送路が実現された。第1の帯域は、現在はデータセンター内での短距離の光配線に使われている。
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