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単線の圧着が引き起こす不具合【後編】Wired, Weird(3/3 ページ)

今回は減圧ポンプに使用されるモータードライバーの不具合調査の続きだ。不具合原因と思われる基板は割り出せたので、基板上の回路から、機能を一つずつ確認していこう。

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導線をハンダ付けして修理

 これで『欠相アラーム』の不具合の原因は判明した。コイルと同じ太さの導線をハンダ付けして延長し、ヒシチューブでカバーした。チョークコイルは温度が高温になる部品ではないのでハンダ付けで十分だ。Tester-TC1でチョークコイルの特性を測定した。図6に示す。


図6:チョークコイルの特性を測定結果を記したメモ[クリックで拡大]

 図6で中央はインダクタンス(単位:mH)で右は抵抗(単位:mΩ)だ。コイル抵抗値は三相とも142mΩで等長配線だった。インダクタンスは4.36mHから5.67mHでバラツキがあった。シビアな回路ではないのでこの程度で十分だろう。修理後の部品面とハンダ面の写真を図7に示す(ハンダ面は回路が追いやすいように上下反転している。赤丸は修理した三相コイルだ)


図7:修理後の基板。上が部品面、下がハンダ面[クリックで拡大]

 図7の右下に「×印」をつけたチョークコイルが断線していた。部品面ではL1とシルクがある付近のリードだ。短くなったコイルの配線は0.9mmの太めの銅線をハンダ付けして延長し、ヒシチューブでカバーした。高温になる部品ではないのでハンダ付けでも十分だ。

安易すぎた処置

 『欠相アラーム』の不具合が発生した経緯を振り返る。基本的な原因は単線をハトメで圧着した処置が安易すぎたことにあった。より線の圧着ならば圧着時に配線が変形して、ハトメと配線の接触と接続強度は保持される。しかし単線の圧着では芯線は変形せずに、ハトメだけ変形するので接続強度は一時的なものだ。単線の圧着は周囲の温度変化や振動で徐々に接続強度が低下し、いつかは断線する。特に減圧機器には大型のモーターがあり、稼働中の基板はモーターの振動を常に受ける。またAC200Vの三相整流回路は制御電源で消費電流が少なく単相接続でも十分な電力が維持でき、低速回転ではカシメ部分の接触抵抗が高くなっても減圧装置の性能にはあまり影響しない。

 この記事を執筆している時に、三相電源の反相エラーが出ていないことに気が付いた。過去に別の機器で、三相電源がない時に単相電源をR相とS相につなぎ、T相には接続しなくても反相エラーが出ないことがあった。やっと反相エラーが出ない理由が分かった。

 今回の『欠相アラーム』が出る不具合原因は単線の圧着にあった。一般的に単線の圧着は避けるべきだ。単線の圧着は電流が大きいと、接触不良で火災事故を引き起こす。三相モーターで欠相になるとモーターのコイルに過負荷がかかって、モーターが燃えることもある。単線の圧着には、線材と圧着端子と圧着工具をきちんと選び、十分な注意を払って作業すべきだ。

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