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直流/交流電圧や抵抗の測定と仕様の見方初めて使うデジタルマルチメーター(2)(2/8 ページ)

デジタルマルチメーターの基礎的な使い方について解説する本連載。今回は直流/交流電圧および抵抗の測定と仕様の見方について説明する。

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積分時間設定による商用交流電源ノイズ抑制

 高分解能A-D変換器を搭載しているデジタルマルチメーターでは、積分時間を設定できるようになっている。入力電圧信号に50Hzや60Hzの商用交流電源の波形がノイズとして重畳することが多いため、下図に示すように積分時間を設定して平均化を行い、商用交流電源によるノイズの影響を抑制できるようになっている。34461Aでは、商用交流電源は50Hzと60Hzがあるため時間で設定するのではなく周期(PLC:Power Line Cycle)で設定するようになっている。50Hzであれば1PLCは20ms、60Hzであれば1PLCは16.7msとなる。


図5:積分時間設定による商用交流電源ノイズ抑制[クリックで拡大]

 積分時間が1PLC未満の場合は商用交流電源によるノイズ抑制はできないが、測定スピードを速くできる。積分時間を1PLCより長くすると、平均化の効果が高まり商用交流電源によるノイズの抑制効果は高まるが、測定スピードは遅くなる。

 積分時間の設定は、「Aperture」キーを押すと下図の画面が表示されるのでここで設定する。通常の測定であれば10PLCの設定でよい。


図6:34461Aでの直流電圧測定時の積分時間の設定

 「Auto Zero」の設定をONにすると、測定ごとに入力がショートされた状態の電圧を測定したのちに、測定対象の電圧を測定するとゼロ値の補正ができる。測定ごとにゼロ値の補正をすることによって回路内部のゼロドリフトをキャンセルできるが、測定スピードは減少するので高速に測定したい場合はこの機能を設定しない。

 「Input Z」は、直流電圧測定時の入力インピーダンスを規定する設定である。「Auto」に設定すると入力インピーダンスは0.1V、1V、10Vレンジでは10GΩとなり、100Vと1000Vレンジでは10MΩとなる。「10MΩ」に設定すると全てのレンジで同じ10MΩの入力インピーダンスになる。通常の測定では「Auto」の設定でよい。

直流測定で発生する誤差要因

熱起電力による誤差

 2種類の異なる金属を接合した状態で両端の温度が異なると起電力が発生するゼーベック効果を積極的に利用したのが、温度センサーの熱電対である。デジタルマルチメーターを使う場合でも、端子に接続する金属によって熱起電力が発生する。発生する電圧は大きくないが、微小電圧を測定する場合は誤差要因となる。

表2:端子が銅合金で作られたデジタルマルチメーターで発生する熱起電力
銅と接合する金属 近似値(μV/℃)
カドミウム - スズはんだ 0.2
<0.3
0.5
0.5
黄銅 3
ベリリウム銅 5
アルミニウム 5
スズ - 鉛はんだ 5
コバールまたは合金42 40
シリコン 500
銅酸化物 1000

 熱起電力の発生を抑制するためには、デジタルマルチメーターに接続する配線材に銅を用いるようにする。また、温度差が発生しないようにデジタルマルチメーターの冷却を妨げないようにする。

負荷による誤差

 信号源抵抗が高い電圧源の直流電圧を測定する場合は、デジタルマルチメーターの入力抵抗の影響を受ける。

 下図に示すように測定した電圧源の電圧は、信号源抵抗Rsとデジタルマルチメーターの入力抵抗Riによって分圧されてしまい誤差が生じる。


図7:デジタルマルチメーターの入力抵抗の影響によって発生する誤差[クリックで拡大]

 誤差を小さくするには、デジタルマルチメーターの入力インピーダンスが0.1V、1V、10Vレンジでは10GΩとなるように、「Input Z」の設定で「Auto」に設定する。

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