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ワイヤーボンド(1) ―― ワイヤーボンディングとは中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(71)(1/2 ページ)

今回から、半導体チップと外部電極との接続する「ワイヤーボンド」について解説していきます。

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 前回まで説明してきた半導体は実際にはチップ単体で使用することはできません。最終的にはパッケージに搭載し外部端子と接続して初めて機能します。ですが使用するチップのサイズは小信号用で1mm角以下であり、はんだ付けなどの接続で信号を取り出せるサイズではありません。
 このチップ〜外部端子間の微細な接続に用いられる技術がワイヤーボンドと呼ばれる技術であり、金属間化合物を介して接続するので信頼性は非常に高くなります。

半導体チップと外部電極との接続

 半導体を回路で使うためには2つ以上の電極が必要であり、チップ裏面を1つの電極としても残りの1つ以上の電極を外部に接続しなければなりません。
 このためほとんどの半導体では表1のワイヤーボンドと呼ばれる技術を用いてチップ上に設けられた電極と外部引き出し用リードフレームを電気的に接続します。この接続には小信号としては直径10〜100μmの金線が、また大電流用としては直径0.1〜0.3mmのアルミワイヤーが用いられます。
 ここで使用する金はチップ側の電極(パッド)にメッキされたアルミと高温・高圧の条件下で信頼性の高い金属間化合物を作ります。この性質を利用してキャピラリーと呼ばれる治具を使って加圧、加温しながら超音波振動で金ワイヤーとアルミパッドをすり合わせて接合する技術がワイヤーボンドと呼ばれる技術です。
 また近年はコストの面から金ワイヤーから銅ワイヤーへの置き換えが進んでいますが、銅は金に比べて衝撃強度が大きい(硬い)のでボンディング時の圧力でチップがダメージを受けないようにパッド上に緩衝用のメッキ層(Ni+Cu+Pgなど)を設ける必要があります。


表1:ワイヤーボンディング概要[クリックで拡大]
[1]出所:http://www.kashima-electro.com/ems/substrate-cob.html
*用語については別号で説明します。

*本稿ではボンディングの呼称を下記のように区分しています。

  • 1stボンド/2ndボンド
    • 順番を主眼にした場合の呼称
  • ボールボンド/ウェッジボンド
    • 形状を主眼にした場合の呼称
  • ステッチボンド
    • 固着機能を主眼にした場合の呼称。主としてウェッジ形状の2ndボンドを表します

 なお、パワートランジスタなどの大電流用に用いるアルミワイヤーは表面が酸化してボールがうまく作成できないので1st/2ndボンドともに不活性ガス中でのウエッジボンドが用いられます(パッド側もアルミメッキ)。

注)銅ワイヤーでの検討課題
 銅ワイヤーでも同様のメカニズムでボンディングが行われますが銅ボールは金ボールよりも硬いため、パッド温度を300℃以上に設定する必要があるようです。
 また銅は金に対して著しく酸化しやすいため、ワイヤーメーカーでの製造時から酸化が始まります。
 ですから運送、半導体メーカーの倉庫、工程などでの酸化をどうやって防ぐかが銅ボンディングの品質管理上重要になります。(20日程度の放置品で接合力が半減)

 またこれら流通コストの増加に加えてボンディングボール作成時のアーク放電による酸化を防ぐためやステッチボンドでの銅の生地面を保持するために水素含有の特殊な窒素ガス(N2+数%H2)を吹き付けるのでコスト的には金ワイヤー使用時と接近します。

 金属間化合物は2種類以上の金属から成る合金の一種です。

<合金> 周期表上で近くにある元素同士により形成され、元の金属のどちらかの構造を保持しながら別種の金属原子がランダムに配置された物質であり、全体が一様な「固溶体」構造をとります。その組成比はある幅の中で自由です。「固溶体」には原子半径が似た他の原子に置き替わる「置換形」と、原子の隙間に原子半径の小さい原子が入り込む「侵入形」があります。
例:コンスタンチン(Cu55Ni45) 銅(原子番号29、11族)とニッケル(原子番号28、10族)の合金

<金属間化合物> 周期表上で離れた位置にある2種類以上の元素の化学結合により形成され、元の金属とは全く異なる結晶構造をもつ、その名前の通りの「化合物」です。その組成比は簡単な整数比です。単体金属には無い特異な性質を示すものができる組み合わせが幾つか知られています。
 「化合物」ですから電気分解や還元などの化学処理を施さないと元の金属には戻りません。
例:周期表の11族の金(原子番号79、11族)と、12〜14族の元素間の化合物であるアルミ(原子番号13、13族)、銅(原子番号29、11族)とアルミなど。またGaAs (III-V族)の化合物半導体も含まれます。

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