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パワエレの主流になりつつあるSiC技術コストが大きな障壁だが(2/3 ページ)

SiC(炭化ケイ素)技術は今や、パワーエレクトロニクスの主流になりつつある。本稿では、米国で開催された「APEC 2023」(2023年3月19〜23日)における企業の出展内容を通してSiCデバイスの最新動向を紹介する。

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新規プレイヤーも多数参戦、SiCの有望性を示す

 APEC 2023では、InfineonやSTなどの大手パワー半導体メーカーの他にも、意欲的な新しいSiCメーカーも集まった。これは、SiCが成長中の技術であり、既存および新規アプリケーションにおいて破壊的な可能性を秘めているということの証左だといえる。

 パワーエレクトロニクス分野におけるSiCの有望性が、新しいプレイヤーを引き付けているのだ。

 その一例が、RF半導体ソリューションの大手サプライヤーQorvoだ。同社は、モバイル機器メーカーへの依存度を下げるべく、2021年10月にUnitedSiCを買収している。

 QorvoはAPEC 2023において、750VのSiC FETを披露した。オン抵抗は5.4m〜60mΩで、表面実装型TOLLパッケージを採用している。同社によるとこのSiCデバイスは、例えば数百ワット〜数キロワットのAC-DC電源や、最大100Aのソリッドステートリレーおよびブレーカーのような、スペースに制約のあるアプリケーションをターゲットとしているという。

QorvoはAPEC 2023において750V耐圧SiC FETを用いたサーキットブレーカーのリファレンスデザインのデモを行った[クリックで拡大]
QorvoはAPEC 2023において750V耐圧SiC FETを用いたサーキットブレーカーのリファレンスデザインのデモを行った[クリックで拡大]

 Qorvoのパワーデバイス事業担当チーフエンジニアであるAnup Bhalla氏は、「われわれがターゲットに定めているのは、スペースに制約のある設計向けに低抵抗を必要とし、より小さい面積でより多くの電力を絞り出すようなアプリケーションだ。この新しい750V SiC FETは、エンドシステムの導通損失を最小限に抑えることでドレイン・ソース間オン抵抗を改善し、小型表面実装パッケージでコンパクト化を容易にする」と述べる。

 Bhalla氏は、「なぜ低抵抗なのかというと、発熱が少ないからだ。しかし、半導体チップの小型化と、発熱の低減は別の問題だ。オン抵抗の低減は高性能化を意味するが、そのためにデバイスのダイが大きくなる可能性がある。Qorvoの750V SiC FETは、同じ電圧範囲で動作する他のデバイスと比べて50%の小型化を実現する」と主張している。

 この他にも、買収によってSiC市場に参戦した半導体メーカーとして挙げられるのが、onsemiだ。同社は、2016年にFairchild Semiconductorを買収し、SiC技術を手に入れた。次いで2021年には、SiCサプライチェーンを強化すべく、GT Advanced Technologies(GTAT)を買収している。GTATは、米ニューハンプシャー州に拠点を置くSiC材料メーカーだ。

 onsemiはAPEC 2023において、同社の「EliteSiC」デバイスをベースとした電源設計の開発を推進するオンラインシミュレーションツールを発表した。設計エンジニアはこのシミュレーターを使用し、カスタマイズ可能な回路技術の拡張ライブラリーを介して、SiCデバイスを仮想的に試験/検証できる。さらに、シミュレーターを高性能PLECSモデルと併用することで、ハードウェア製造や試験に頼ることなく、設計サイクルのかなり初期の段階でアプリケーションに有意義な洞察を集めることが可能だ。

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