パワエレの主流になりつつあるSiC技術:コストが大きな障壁だが(3/3 ページ)
SiC(炭化ケイ素)技術は今や、パワーエレクトロニクスの主流になりつつある。本稿では、米国で開催された「APEC 2023」(2023年3月19〜23日)における企業の出展内容を通してSiCデバイスの最新動向を紹介する。
シリコンとの共存
APEC 2023は、半導体ポートフォリオを披露するパワー半導体メーカーで溢れかえっていた。同時に、これらのメーカーは、SiC市場への投資を主張している。Infineonやonsemi、STなどのさまざまなパワー半導体メーカーは、投資を継続しながら、より多くのリソースをSiC技術に移行しているところだ。
SiCの可能性を早い段階から確信していたInfineonは、シリコンIGBTのナンバー1サプライヤーでもある。インフィニオンは、ワイドバンドギャップ(WBG)技術のハイプサイクルを注視しつつ、シリコンとのバランスを取っていく必要がある。Friedrichs氏は、「どの成長シナリオが持続可能かは、特定のパワーアプリケーションに依存するだろう」と述べている。
車載用パワーエレクトロニクス市場では、現在、シリコンパワー半導体が70%近くのシェアを占めている。しかし、いくつかのアプリケーションではIGBTからSiCへの置き換えが進んでいる。その流れは2020年、EVでのSiC採用が急加速したことから始まったといえる。ただし、両技術はそれぞれの特性やメリットを生かして共存する可能性が高いことから、今後数年間はシリコンが主要なパワーコンポーネントであり続けるだろう。
InfineonのプリンシパルアプリケーションエンジニアであるAndre Christmann氏は、「シリコンは今後5年間、パワーコンポーネントにおいて主要な存在であり続ける可能性が高い。しかし、シリコンが安定的に推移する一方、SiCは多くのアプリケーションでシリコンを補完し、新たなアプリケーションを実現することで成長を続けるだろう」と述べている。
とはいえ、SiC技術はまだ発展の途上にあり、パッケージング、制御、ドライバー、センサーなどのビルディングブロックを包含するエコシステムを強化する必要がある。パワーエレクトロニクス用途では、SiCの性能を最大限に引き出し、高熱伝導性、低寄生インダクタンス、高定格電流を実現するパッケージングソリューションがますます求められている。ゲートドライバー回路も、SiCデバイスの重要な設計要件の一つだ。
そして、SiCウエハーには、コストという重要な問題が依然として残っている。そのため、新しい製造モデルと製造インフラが必要とされている。
【翻訳:田中留美、編集:EDN Japan】
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