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電磁気学入門(7)降圧コンバーターの設計事例や損失計算 DC-DCコンバーター活用講座(50)(3/4 ページ)

電磁気学入門講座。今回は、降圧コンバーターの設計事例や、損失計算について解説します。

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インダクターのインピーダンスRLを検討

 インダクターのインピーダンスRLを検討していきます。100μHのSMDパワーインダクターの巻き線の長さは、通常わずか70cm程度なので、近接効果はおおむね無視できます。しかし、DC-DCコンバーター活用講座(48):電磁気学入門(5)コアレス〜表皮効果で挙げたように、表皮効果は、降圧コンバーターのリップル電流の周波数の2乗で実効断面積を減少させます。

 しかしながら、インダクターのデータシートは、DC抵抗(DCR)は提示していますが、AC周波数における実効RLの提示はありません。これは、AC電流がワイヤの断面積の全体を流れる限りは問題にはなりません。この場合、AC抵抗はDC抵抗と等しいと考えられ、算出にはデータシートのDCRを簡略的に使うことが可能です。

 設計において表皮効果が懸案であれば、巻き線のAC抵抗とDC抵抗の比が等倍、別の言い方をすれば、表皮深さとワイヤ半径が等しいことを判断材料にできることを覚えておいてください。

<strong>式7:AC抵抗とDC抵抗の比(円筒形ワイヤ)</strong>
式7:AC抵抗とDC抵抗の比(円筒形ワイヤ)
δは表皮深さ、rはワイヤ半径

 この式は、r=δの場合、式は1:1、つまりワイヤの断面全体に全AC電流が流れることを示しています。スイッチング周波数が120kHzでは、表皮深さはおおよそAWG26ワイヤの半径と同じで、このゲージかより細いゲージを使う限り、表皮効果は完全に無視できます。

 以下の表1はクイックリファレンスです。

AWG ワイヤ半径(mm) 断面積(mm2 DC抵抗(Ω/m@20℃) ACR=DCR時の周波数(概算)
18 0.510 0.823 0.0210 21kHz
20 0.406 0.518 0.0333 34KHz
22 0.322 0.326 0.0530 55kHz
24 0.255 0.205 0.0842 88kHz
26 0.202 0.129 0.134 140kHz
28 0.160 0.081 0.213 220kHz
30 0.127 0.051 0.339 350kHz
表1:ワイヤ寸法とACR/DCRが同一の周波数

 電磁気学入門(5)コアレス〜表皮効果の式1および式7を組み合わせることで、既知のDCR、円筒形銅線の径、周波数からACRを算出することが可能です。

<strong>式8:円筒形銅マグネットワイヤのACR算出</strong>
式8:円筒形銅マグネットワイヤのACR算出
ただし、ρはDCR(Ωm-1)、lはワイヤ長、Aeffは実効面積(表皮深さ断面積)

 その損失電力でのDCRと表皮効果への影響を確認するため、うわべは同等に見える330kHzで動作する降圧コンバーター用の100μHのパワーインダクター、2種類を選択肢として検討します。

仕様 SMDインダクター1 SMDインダクター2
インダクタンス 100μH 100μH
サイズ 10mm×10mm×5mm 10mm×10mm×5mm
定格電流 1.5A 1.5A
飽和電流 1.8A 1.8A
ワイヤゲージ 1×AWG24(0.205mm2 4×AWG30(total 0.204mm2
DCR(ワイヤ1.5m) 0.126Ω 0.127Ω
ACR(@330kHz) 0.170Ω 0.127Ω
表2:2種類のパワーインダクターの仕様の比較

 両方のインダクターは、DC定格の比較においては全く同じに見えます。しかしながら、インダクター1はインダクター2と比較して、330kHz時のAC損失が34%高くなっています。

実用的ヒント

 パワーインダクターを選択する際には、ACRとDCRの両方に注意を払う必要があります。もし、インダクターが高周波リップルに対応する必要があるなら、リッツ線またはフラットワイヤを使った設計が必要になる可能性があります。一般的な経験則から、コア温度の低減、製造許容差への対処、高温時の磁気性能低下を考慮して、少なくとも定格が平均出力電流の1.5倍のインダクターを選択します。

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