先端半導体製造の歩留まり向上に効く「ベベル成膜」とは:ウエハーエッジの重要性が増す(2/3 ページ)
半導体製造の歩留まり向上に貢献する、ベベル成膜技術とベベルエッチング技術について解説する。
ベベルエッチ・クリーニングでは新たな課題も
ベベルクリーニングは今後も欠かせない技術ですが、アーキテクチャの進歩に伴い、新たな課題も生じています。例えば、高アスペクト比の3D NANDトレンチに使用される長時間のウェットエッチングプロセスでは、深刻なピッティングやべベルの損傷を引き起こしかねない薬液を使います。
3Dシーケンシャル・インテグレーション(垂直方向にCMOSを積層する)技術を用いた、層間にインターメディエイト配線(iBEOL)を使用する先端ロジックデバイスも新たな課題を生んでいます。銅やタンタルなどの金属配線がベベル領域に入り込んでくるためです。
ベベルクリーニングが有益であることに変わりはありませんが、微小な金属粒子の拡散を防止できないため、その効果は限られます。
さらに、ウエハー接合を利用した3Dパッケージング技術の採用が拡大するにつれ、ベベルを含むウエハー外周部での膜のばらつきやプロファイルのロールオフには、接合工程での歩留まり低下を防ぐため、非常に厳しい制限が設けられるようになりました。これまでもウエハー接合が広く使用されてきたMEMS分野では、ボイドや封止不良、接合強度の低下などの問題が指摘されていましたが、形状的な要求はそれほど厳しくありませんでした。
ベベル成膜の登場
一方で、こうした課題に対処する新しい方法も登場しています。精密に制御され、特性を調整できる絶縁体保護フィルムを、ベベル上に成膜する選択的PECVD(プラズマ励起科学気相堆積)です(図2)。この手法には多くの利点があります。例えば、要求の厳しい処理工程(長時間のウェットエッチングなど)を行う前に保護フィルムを成膜することで、粗さや平たん度のばらつきを大幅に低減するほか、複雑な多層膜や露出した配線材料をベベル上に封止することにより、汚染や損傷のリスクを低減します。
もう一つの利点は、ウエハー表面と裏面の成膜を単一のプロセスに統合できることです。これは、品質、時間、経済的な理由から非常に望ましいことですが、多くのSiO2(二酸化ケイ素) 成膜や成長プロセスでは不可能とされています。
大手半導体メーカーは既に世界中の先端ファブでベベル成膜を導入しています。3Dインテグレーションをより容易に実現するこの技術が、ゲームチェンジャーになることが証明されているのです。フランスの研究機関CEA-Letiの半導体プラットフォーム部門責任者であるアン・ルール氏は、「歩留まりを大幅に向上し、半導体メーカーが(今まで処理が難しかった)画期的な生産プロセスを採用することを可能にします」と述べています。このベベルに特化した技術を使用することで、ウエハーフロー全体にわたり、ラインとパッケージングの歩留まりをコスト効率よく大幅に向上させることができます。
量産環境でこれらの結果を達成するには、ベベル成膜中のウエハーのアクティブエリアの保護を含む、多くの要素に注意する必要があります。iBEOLやその他の多層配線に使用される積層膜は、サーマルバジェットがますます厳しくなっていて(これが従来の熱酸化プロセスがベベル成膜に適さないもう一つの理由です)、損傷を受けやすくなっています。
ベベル部でのプラズマの正確な制御は不可欠です。効果的なアプローチの一つが、トロイダルプラズマの使用です。複数のサイズのプラズマ排除領域(PEZ)封じ込めリングによりプラズマを精密に成形し、高度に制御された領域内(ウエハー表裏面の外周から4mm)で最適な結果を得ることができます。最終的に考慮すべきは膜そのものです。高度な組成の柔軟性と物理的特性の調整幅は、特定の状況に合わせたソリューションを必要とするエンジニアにとって重要な成功要因です。iBEOLベベル成膜に関する研究発表によると、SiH4(モノシラン)ベースの酸化物リッチなシリコン酸窒化膜は、純度、ウェットエッチング耐性、ボンディングエッジの品質、金属汚染からの保護という優れた特性を備え、厳しいFEOL環境において、さまざまな材料を用いた複雑な積層ウエハーの加工を実現します。
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