ステップダウン形DC/DCコンバーターの設計(4):たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(6)(3/3 ページ)
今回はいままで前提にしてきたチョークの電流連続性が途切れた場合のコンバーターの振る舞いについて図式を基に検討します。
結果の検証
表1、図4、図5に理論値とシミュレーション結果の比較を示します。出力特性、リップル電圧および、充電タイミングなどの値はカーソル読みの範囲内で良好な一致を見せており、ここで説明した計算式が十分に設計に使えることが分かります。
ただし既に説明したように、実機でのキャパシターCのインピーダンスは“1/jωC+ESR”ですから実際のリップル電圧は表1の数倍の値が発生します(アルミ電解コンデンサーの場合)。ですが電流連続モード時よりリップル電圧Vrは小さくなりますので連続モードで問題がなければ問題にはなりません。
今回は図式解法とエネルギー保存則を用いてチョーク電流不連続の動作について説明しました。その結果、電流が一定値(臨界値)を下回ると出力電圧は上昇することが分りました。
通常はオン時間tonを短縮して出力電圧を安定化しますが、制御下限のton(MIN)を下回るとハンチング現象を起こすので疑似負荷を付けますが副作用として効率が低下します。この対立する課題を解消する手法として周波数制御の手法があることも紹介しました。
次回はDC/DCコンバーターの設計とは直接関係はないのですがコンバーターを設計する上で欠かせない過電流保護回路について説明します。
執筆者プロフィール
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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