GPUをチップレットで構成する「Ghiplet」 次世代の設計では主流に?:NVIDIAの動きに注目しておきたい
GPUをチップレットで構成する(これを「ghiplet」と呼ぶ)動きは活発になりつつある。この動きで先行するのはAMDとIntelだが、NVIDIAでは目立った動きはないようだ。
GPUをチップレットで実装すると、それは“ghiplet”と呼べるだろうか? 半導体業界の専門家であるChetan Arvind Patil氏の答えは「イエス」だ。Patil氏は自身のブログ「The Rise of Semiconductor Ghiplet」の中で、大型で複雑なGPUデバイスの歩留まり低下に苦戦しているモノリシックGPU設計と比較した、チップレットアーキテクチャのGPUの利点を解説している。
言い換えれば、全てのレンダリングは、大規模なコンピューティングGPUではなくチップレットで処理されている。AMDのGPU「Radeon RX 7000」シリーズは、大型のグラフィックスダイと複数のメモリダイを集積した、最初のチップレットベースGPUの一つである。同社は現在、GPU設計にさらに多くのチップレットを使用することを検討している。
「ghiplet」アプローチには、AI(人工知能)のように高い演算性能を要求するアプリケーションにとって、メモリダイをメインGPUダイの周囲に分散させることができるという利点がある。つまり、ghipletはコンピューティングとメモリのバランスを取るのに役立つ。チップレットのモジュール性は、メモリ処理のような特定の機能の最適化に役立つ。
メモリ以外にも、チップレットは高度なインターコネクト実装によって、より高速で効率的なデータ処理を提供する。これは特に、AIの他、データ分析、科学研究などのHPC(高性能コンピューティング)アプリケーションにも恩恵を与える。
GPUはチップレットへの移行が遅れており、GPU大手のNVIDIAは、2024年3月に発表した次世代GPU「Blackwell」はチップレットではないと述べている。多くの臆測をよそに、NVIDIAは今のところモノリシックに固執している。その理由の一つに、GPUがCPUよりもはるかに複雑なことが挙げられる。
しかし、GPUがグラフィックスやゲームの域を超えて使われるようになる中、チップレットはGPU設計に多くの柔軟性と拡張性をもたらす可能性がある。そこでIntelは、「データセンター GPU Maxシリーズ」で、“ghiplet”分野に参入した。同シリーズでは、1000億個以上のトランジスタを47個のチップレット(Intelでは「タイル」と呼ぶ)に搭載し、最大128Gバイトの広帯域幅メモリを内蔵している。
図2 「Intel データセンター GPU Maxシリーズ」(開発コードネーム「Ponte Vecchio」)は、Intelの2.5D(次元)パッケージング技術「EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)」および3Dパッケージング技術「Foveros」を活用し、プロセッサの密度を高めている[クリックで拡大] 出所:Intel
チップレットアーキテクチャのモジュール性がGPU設計に適していることは、当然のように思える。AMDとIntelは既にこの分野での競争に参入していて、NVIDIAの動きが大いに待たれる。AIアプリケーションや、GPUと組み合わせたメモリ容量のニーズによって、コンピューティングとメモリのバランスがますます求められるようになると、より一層そうした期待が高まるだろう。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EDN Japan】
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