最後まで頑張った電解コンデンサーに感動:Wired, Weird(2/2 ページ)
工作機器のコントローラーの修理を依頼された。不具合内容は、「数日前には動作が不安定だったがコントローラーを外す前には表示が点灯していなかった」ということだった。
なぜコンデンサーは外れていたのか?
図5が電源基板のハンダ面だ。
図5中央下側の位置(赤四角で囲った部分)にパターンがつながっているランドが見える。ここに電解コンデンサーが実装され、左側は穴だけ開いていた。おそらくボトムダウンした時にハンダの接続より強いはがす力がかかり、電解コンデンサーがハンダ面からはがされたようだ。残っていた電解コンデンサーはヘッドアップもしており、下側の力が弱くはがれずに基板に残ったと思われた。
容量2倍のコンデンサーに交換
図6は修理後の写真だ。
もともと実装されていた1000μFの2倍容量の大きい2200μFの電解コンデンサーを2個実装し、電源をパワーアップさせてみた。このコントローラーにはベースに整流用のダイオードブリッジと電解コンデンサー、モーター駆動用IGBTモジュールが実装されていた。テスターで保護ダイオードの特性を測定したが、これらの部品は正常だった。図7に示す。
図7はその測定様子だ。テスターのダイオードモードでAC入力と電解コンデンサーの2つの端子を接続する4個のダイオードのVFを測定し、ダイオードブリッジについて調べた。IGBTモジュールは6個の保護ダイオードを確認すれば良い。図8に回路図を示す。
図8左はダイオードブリッジの、図8右はIGBTモジュールの回路図だ。内部のダイオードを確認することで部品が壊れていないかを確認できる。修理後の制御基板の写真を図9に示す。
図9左は制御基板、図9右は筐体の上から見た表示部の写真だ。今回は故障した原因がはっきりと分かったので、現場でしっかりと動作してくれると思われた。
電解コンデンサーの劣化状態が詳細に分かる貴重な経験
今回の修理では電源が故障する過程での電解コンデンサーの劣化状態が詳細に分かる貴重な経験だった。電解コンデンサーが最後まで頑張って動作して、最後の最後に電源の寿命が尽きた状況をしっかりと見ることができた。厳しい環境でも最後まで頑張って電源を動作させ、寿命を全うした電解コンデンサーの最後の姿に感動すら覚えた。
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