ステップアップ形DC/DCコンバーターの設計(3)CRスナバー回路とチョークの要求特性:たった2つの式で始めるDC/DCコンバーターの設計(10)(2/4 ページ)
今回はCRスナバー回路とチョークの要求特性について説明します。
パターンの寄生インダクタンス
本連載の第1回でインダクタンスの定義として、
「電流Iが作り出す磁束をφとした時、電流Iに鎖交する磁束φと電流Iとの比」を自己インダクタンス、あるいは単にインダクタンスと呼び“L”で表します。
と説明しました。実機で使用するプリント基板においてもパターン(=銅箔)に電流が流れるとパターンの近傍空間には磁束Φが発生します。この磁束Φは当然ながらパターンと交差(鎖交)するので上記の通りプリント基板のパターンにはインダクタンスが発生します。
このインダクタンスをパターンの寄生インダクタンスLeと言い、近似的に次の1式で表すことができます。
本連載の「たった2つの式……」には含まれませんが設計に使う式として記しておきます。ここで各記号は次の通りです。
Le:プリント基板の寄生インダクタンス(μH) L :銅箔の長さ(mm)
t :銅箔の厚み(mm) W :銅箔の幅(mm)
1式から分かるように、プリント基板の寄生インダクタンスLeは銅箔の長さL、厚みt、幅Wによって変化します。実際の数値例として次の値を設定しLeを計算してみます。
銅箔の長さ:L=1(cm)=10(mm)
銅箔の厚み:t=35(μm)=0.035(mm)
銅箔の幅 :W=0.25(mm)
この計算例から線幅2mm以下、かつ線長Lが10mmを超えるパターンのLeは第1項が支配的であり、かつ第2項は省略できると言えます。
同じ条件で線長Lを10mmステップで変えるとLeは表1のような値になります。よく使われる線幅W=0.25〜1.0mmの範囲であれば設計初期段階では概略1(nH/mm)と見積っても良いでしょう。ただし物理的な条件が大幅に変われば計算もその度に必要になります。特にGaNやSiCなどの高周波動作が可能な素子ではパッケージ内のワイヤーボンドの寄生インダクタンスが素子の動作を乱すのでパッケージの工夫も必要になります。
また表1から分かるように線幅Wを広くすればLeは減少しますが比例的ではありません。例えば1mm幅では0.25mm幅の1/4にはならず70〜80%程度にしかならないことには注意してください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.