エッジサーバの性能を最大化するストレージとは:処理能力と熱管理のバランスが重要(2/4 ページ)
エッジサーバは、さまざまなマーケット、さまざまな用途で利用が進んでいます。しかしながら、最適なパフォーマンスを実現するには、エッジサーバに求められる個々の要件を満たすことができる、適切なストレージ製品と組み合わせて使用する必要があります。本稿では、エッジサーバが使われる代表的な用途を紹介するとともに、各用途に共通するストレージのニーズについて説明します。さらに、エッジサーバと組み合わせて使用するストレージ製品の選択に際して、考慮すべき2つの優先事項を紹介します。
2-1.コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)
コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)は地理的に分散し相互接続されたサーバのネットワークです。エンドユーザーの近くにWebコンテンツを保存し、ユーザーに近い場所からコンテンツを配信することで遅延を抑え、迅速な読み出しが行えるため、Webコンテンツや動画のストリーミング配信といった用途で重要な役割を果たしています。
クラウドサーバは拡張性やセキュリティ、仮想化などの面で多くのメリットを提供しますが、トラフィック量が多くユーザーとの距離も遠いため、応答に時間がかかる場合があります。CDNはユーザーへの応答速度が重視されることから、クラウドサーバでは顧客の要求を満たす十分な応答性を提供できるとは限りません。一方、エッジサーバは頻繁にアクセスされるコンテンツをローカルに保存することで、クラウドからコンテンツを定期的に取得する必要がありません。エッジサーバをリモートコンテンツキャッシュとして使用した場合、応答時間の大幅な短縮が実現し、優れた顧客体験につながります。
例えば、世界各国で大規模に展開する大手動画配信サービスも、エッジサーバを利用したCDNでストリーミングを最適化しています。映画が保存されているデータセンターは大量の帯域幅を消費するため、早送りや巻き戻しなどの操作にタイムラグが生じ、応答が遅くなりがちです。エッジサーバは、小規模に分散したセンターを通じて顧客の近くからコンテンツを配信することでタイムラグを減らし、遅延の無いスムーズな応答性を実現することで顧客体験を向上させています。
2-2.データプロセッシング
データプロセッシングはエッジサーバの重要な役割の一つです。エッジサーバは、データをクラウドサーバに送信する前段階で、エッジデバイスから取得した生データを分析、クリーニング、フィルタリング、圧縮します。こうしたデータの前処理プロセスによって、ネットワーク経由で送信するデータ量が減り、遅延を緩和することができます。ここで、ビデオ監視データを解析するプロセスについて、クラウドサーバで直接処理する場合とエッジサーバでデータを前処理した場合を比較してみます。
クラウドサーバでビデオ監視データを直接処理する場合、多数のルーターから大量のデータが送信されてくるため、高トラフィックを処理する必要があります。そのうえで、複数の異なるビデオストリームを並列ビデオ解析しなければなりません。この場合、データ発生源との距離、そして解析処理に伴う高い負荷によって遅延発生の可能性が高まります。では、エッジサーバでデータを前処理した場合はどうでしょうか。この場合、エッジサーバはリモートに置かれたプリプロセッサとして機能し、クラウドサーバによる解析が必要なビデオストリームの量を絞り込むことで、トラフィックを抑えることができます。
このように、コンテンツをローカルに保存しエッジサーバでデータを前処理することで、ネットワークリソースが最適化され、データ解析の効率向上が可能となります。
2-3.無線アクセスネットワーク(5G)とブロードバンド
無線アクセスネットワーク(RAN)は、エンドユーザーのデバイスを無線リンク経由でモバイルネットワークに接続するもので、新しい5G(第5世代移動通信)ネットワークは超高速、低遅延、広帯域幅を実現しています。さらに現在、RANの仕様をオープン化して、さまざまなベンダーのネットワーク機器を利用可能にするオープンRANに向けた取り組みがO-RAN(Open Radio Access Network)アライアンスを中心に進められています。オープンRANは、携帯電話基地局に使うさまざまな機器を特定の単一ベンダーに依存せず、異なるベンダーの機器を組み合わせて利用できるようにする取り組みです。これによって、利用機器を複数ベンダーから柔軟に選択できるため、迅速かつ低コストでのネットワーク構築が可能となり、総所有コスト(TOC)の削減にも寄与します。
具体的にO-RANでは、これまで信号処理部として使われてきた集中型ベースバンドユニット(BBU)の機能を見直し、商用オフザシェルフ(COTS)のエッジサーバに置き換えることを目指しています。O-RANにおいてエッジサーバは、アンテナ部の近くに配置され、信号をアナログ-デジタルに相互変換し送受信する無線ユニット(RU)として機能します。さらに、エッジサーバは分散ユニット(DU)としても利用されます。これは、遠隔地を含めたネットワーク全体に分散配置されるコンポーネントで、信号の変調・復調、周波数帯域など無線リソースの管理やネットワーク全体の統合制御を実行します。
エッジサーバは、高速・大容量の通信を提供するブロードバンドプロバイダーにとって、遅延の短縮、バックボーン接続効率の向上、ストリーミングコンテンツの高品質化に加えて、複数コンテンツの一元管理によるコスト削減といったメリットがあります。
2-4.倉庫や工場
エッジサーバは大量のデータを最小限の遅延で処理することができます。これは、インダストリー4.0として知られる倉庫や工場環境に多大なメリットをもたらし、企業が物流や在庫を最適化する上で重要な役割を果たしています。超低遅延を特徴とするエッジサーバは、リアルタイムの応答によって、迅速なアクションや自動化のサポート、意思決定のスピードを加速することができます。
また、エッジサーバの低遅延性は、監視やイベント処理にも役立ちます。例えば、倉庫管理チームが安全上のリスクを通知するためにアラームを設定していたとします。こうした状況では時間が非常に重要で、リモートサーバとの間でデータの送受信に無駄な時間を費やすわけにはいきません。エッジサーバはローカルでデータを処理するため、遅延なく確実にアラームを鳴らすことができます。
さらに、エッジサーバはネットワーク接続が不安定もしくは接続されていない状況であっても機能を確保するため、自立したオペレーションへの対応が可能です。
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