Gelsinger氏がCEO退任 再起をかけたファウンドリー事業も振るわず:2024年のIntelは37億ドルの赤字に
2024年12月、Intel CEO(最高経営責任者)のPat Gelsinger氏が退任した。経営再建を期待されてCEOの職に就いたものの、要だったファウンドリー事業が行き詰まるなど、実行力が問題となった。Intelの2024年の業績は36億8000万米ドルの赤字になると予想されている。
2024年12月2日(米国時間)、カリスマ性と野心に満ちたIntelのCEO(最高経営責任者)、Pat Gelsinger氏が退任した。同氏は3年以上にわたりIntelの指揮を執った。これを受け、米国の半導体業界を代表する企業であるIntelは後任を探し始めている。アナリストらは、Intelの2024年の損失額は36億8000万米ドルに上ると予想している。
18歳でIntel入社、32歳で最年少バイスプレジデントに
Intelは、Robert Noyces氏、Gordon Moore氏、Andy Grove氏といった名だたる人物を擁した半導体業界のパイオニアだ。Intelの本格的な転落はPaul Otellini氏から始まった。Otellini氏は、供給量が不足しているとの理由でAppleのiPhone向けチップの供給を拒否したことで知られている。
Intelの経営の衰退傾向がBrian Krzanich氏、Bob Swan氏の指揮下でも続いた後、鳴り物入りで登場したのがGelsinger氏だ。米リンカーン工科大学で準学士号を取得して1979年に18歳でIntelに入社したGelsinger氏は、1989年に発売されたIntelの第4世代プロセッサ「80486」の主任設計者だった。また、32歳でIntel最年少のバイスプレジデントに就任した。
Gelsinger氏は出世を続け、2001年にはIntelの初代CTO(最高技術責任者)に就任した。それが、同氏のキャリアの挫折の始まりでもあった。Gelsinger氏は上昇志向の道を選び、2009年にIntelを離れ、EMCのプレジデント兼CFO(最高財務責任者)に就任した。
難航した経営再建 ファウンドリー事業も振るわず
2012年、同氏はクラウドコンピューティング企業のVMwareでトップの職に就き、9年間務めた後、当時問題を抱えていたIntelにCEOとして復帰した。Intelの取締役会が金融業界出身のBob Swan氏を解任した後、Gelsinger氏は大きな期待を背負って取締役会に加わった。同氏は、技術職のルーツを持つエンジニアCEOとして、米国を象徴する大企業を統率すると期待された。しかし、振り返ってみるとそれはまさに「言うは易く行うは難し」だった。
Gelsinger氏の再建計画の要であったIntelのファウンドリー事業は、今や見過ごせない問題となり、実行可能な解決策は見つかっていない。他の重要な分野でも、ビジョンよりも実行力が問題だった。
以下は、Gelsinger氏の監督下で起こったIntelの主な失態だ。
- 伝統あるCPU企業でありながら、PCおよびデータセンター向けプロセッサの市場シェアを競合のAMDに奪われている。さらに、x86アーキテクチャのライバルであるArmに収益性の高いサーバ/データセンター市場進出を許した。
- AI(人工知能)の波に乗り遅れ、AIアクセラレーター「Gaudi」の売れ行きも思わしくない。
- Gelsinger氏は政治家との交流に時間を費やしたものの、中国と台湾の関係について不適切な発言をしてTSMCの怒りを買い、巨額の値引きを取り下げられた。
- ソニーのゲーム機やWaymoの自動運転車に向けたチップ供給契約の締結に失敗した。
- イスラエルのTower Semiconductorを54億米ドルで買収しようとしたが、規制上の問題によって断念することになり、3億5300万米ドルの違約金を支払った。
Intelのファウンドリー事業は現在、株主の圧力で子会社化に向けて動いている。我慢の限界が来たのだろう。半導体製造は巨額の投資を伴う長期事業で、時間はIntelに味方しなかった。
Intelは「Intel 18A」プロセスを広く宣伝しているが、たった1つの製品のテープアウトを発表しただけだ。AppleやQualcommといった大手潜在顧客は技術的な問題から18Aの採用を見送ったとも報じられている。18Aプロセスが抱える信頼性の問題は業界メディアも取り上げていて、量産は2026年以降になると見込まれている。
Intelの問題は解決不可能ではない。Gelsinger氏の後継者は壮大な計画を描くのではなく、忍耐と革新と実行を重視する必要がある。Intelの最大のライバルであるAMDではLisa Su氏が数年間、それを実践してきたのだ。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EDN Japan】
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