エンジンルーム内部品の電動化も進む 車両設計はより自由に：DigiKeyとMolexが語る電動化トレンド（3/3 ページ）

MolexとDigiKeyが、自動車の電動化について語った。具体的には、エンジンルーム内のコンポーネントの電動化や、48Vシステムで求められるコンポーネントの要件などについて議論した。

[Shawn Luke（DigiKey）, Matt McWhinney（Molex）, Kirk Ulery（Molex），EDN Japan]

48Vシステム用のコネクターに求められる要素

Molex Matt McWhinney氏 出所：Molex

　高度化する電気系統のサポートに多くの電力を必要とするため、信頼性の高い48Vシステム用コネクター設計には自動車の性能と安全基準を満たすいくつかの基本的な要素がある。

　McWhinney氏は「車両の安全性を確保するにはエレクトロニクスとインフラの相互接続が重要である」と語る。

　48Vシステムは（12Vよりも）高い電圧で動作するため、コネクターと電気系統に堅牢な材料と適切な絶縁を適用し、安全性で信頼性の高い性能を実現する必要がある。電圧が48Vより高くなれば、これはさらに重要になる。

　コネクターに不具合があると、車両システムの誤動作や安全上の問題を引き起こすおそれがある。断線を防ぐため、コネクターにはロック機構とストレインリリーフを設けるとともに、定期的な検査と保守点検行う必要がある。

　「電気系統の安全性と監視制御はこれまで以上に重要になっている」とMcWhinney氏は言う。

　信号品質の維持は、高電圧アプリケーションにとって極めて重要である。信号の完全性が保たれていないと誤動作を引き起こす可能性があるため、コネクターにはシールドケーブルを用いて信号損失と干渉を最小限に抑え、適切な接地と戦略的な配置を行う必要がある。そうした点に配慮するには技術革新と専門知識が必要になる。そこで役立つのが高度なコネクターソリューションである。

　「相互接続が重要なのは当然、と思われるかもしれないが、自動車設計、特に安全性においては相互接続性の重要性は過小評価されている」とLukeは付け加えた。

変化への対応と部品の認証

DigiKey Shawn Luke

　安全要件を満たすことは最優先事項であるが、McWhinney氏によると、自動車の電気系統の要件が流動的である今の状況が問題を難しくしている。そのため、各メーカーはコネクターやその他のコンポーネントを常に見直し、対応する必要に迫られている。

　米国自動車研究評議会（USCAR）に問い合わせると、パフォーマンス要件を確認し、自動車業界における安全基準を満たしたコンポーネントを慎重に評価、検証できる。

　USCAR/LV214または同種の規格に準拠したコンポーネントは一般的に品質、耐久性、信頼性の高い部品であり、性能を犠牲にすることなく路上での衝撃に耐えることができる。

　Lukeは「車両設計における技術革新の機会が増えるにつれて、電動化の流れに乗る自動車メーカーが増えている。この分野では技術革新のサイクルが非常に速いため、標準的なプラットフォームがほとんど存在しない。しかし、自動車メーカーが増えたことで消費者の選択肢も増えた。技術の進歩と量産効果により、自動車の生産コストも下がるだろう」と語っている。

商用車の考慮事項

　この記事では乗用車に関する話題を多く取り上げてきたが、実は同じようなことが商用車（CV）の世界ではもっと前から進行していた。商用車ではディーゼルエンジンや一部の電気系統の電源として12Vシステムから24Vシステムへの移行が急速に進み、早くからスターターが小型化されていた。また、特にバス、建設用車両、農業用車両、大型トラックなどの商用車では電気式HVACの歴史も長い。

　一般的に商用車は所有者や事業主のビジネスに使われるため、信頼性が求められる。乗用車に比べて商用車では信頼性が強く求められることが多いため、密閉性と堅牢性を強化する必要がある。

　乗用車にせよ、商用車にせよ、今日のエンジニアは乗用車ユーザーと商用車ユーザーのニーズに対応し、かつ効率性、耐久性、安全性に優れた、複雑で多くの電力を消費するシステムと機能を数多く設計しなければならない。幸い、テクノロジーサプライヤーは、こうした技術革新の問題を解決する技術を生み出すという挑戦に取り組んでいる。