TenstorrentがBlue Cheetahを買収、チップレット業界のM&Aが加速:Qualcommの発表に続き
著名なチップ設計者アーキテクトのJim Keller氏が率いるTenstorrentが、Blue Cheetah Analog Design(以下、Blue Cheetah)を買収した。TenstorrentはBlue CheetahのAI/RISC-Vチップレットソリューション向けDie-to-Die(D2D)インターコネクトIP(Intellectual Property)のライセンスを受けていた。
QualcommがAlphawave Semiの買収を発表してから1カ月もたたないうちに、もう1件、チップレット関連企業のM&Aが進展した。AI半導体メーカーであるTenstorrentが、Blue Cheetah Analog Design(以下、Blue Cheetah)を買収したのだ。TenstorrentはBlue CheetahのAI/RISC-Vチップレットソリューション向けDie-to-Die(D2D)インターコネクトIP(Intellectual Property)のライセンスを受けていた。
Blue Cheetahは2018年に、Marvellの共同創設者であるSehat Sutardja氏とWeili Dai氏からの初期投資を受け、両氏のチップレットに対する先駆的な展望に基づき設立された企業だ。同社の「BlueLynx」D2DインターコネクトサブシステムIPは、OCP(Open Compute Project)の「Bunch of Wires(BoW)」と、UCIe(Universal Chiplet Interconnect Express)の両規格に準拠したPHYおよびリンク層のチップレットインタフェースを提供する。
またBlue Cheetahは、D2DやDDR、SerDesなど、チップレット設計で重要なさまざまな技術の開発において、アナログミックスドシグナルの豊富な専門知識を有している。同社の共同創設者でありCEOを務めるElad Alon氏は、アナログミックスドシグナル設計の専門家で、Bunch of Wires PHY標準規格の技術リーダーも務めている。
Blue Cheetahはチップレット設計の他にも、さまざまなファウンドリーやプロセスノード向けにチップレットインターコネクトIPソリューションを提供する。2025年初頭には、Samsung Foundryの4nmプロセス「SF4X」を適用してBlueLynx D2D PHYのテープアウトに成功したと発表している。
BlueLynx PHYの最新バージョンは、先進/標準チップレットパッケージングの両方をサポートし、総スループットは100Tbps(テラビット/秒)を超えるという。このためチップ設計者は、BlueLynxサブシステムIPを採用することで、製品展開を確実に成功させる上で不可欠な帯域幅密度や環境ロバスト性に対応できる。
チップレット関連の事業買収はさらに進むか
QualcommによるAlphawave Semiの買収や今回のTenstorrentによるBlue Cheetahの買収は、チップレットエコシステムの統合実現に向けた重要な一歩となるだろう。TenstorrentはBlue Cheetahを買収したことで、高性能インターコネクトやさまざまなアナログミックスドシグナルコンポーネントを自社開発する能力を獲得することになる。
2025年はチップレットの年になるのだろうか。さらなるチップレット関連の買収が進行中なのだろうか。現在、Baya SystemsやChipullerなどのチップレット新興企業がいくつか存在している。大手半導体メーカーはチップレット設計能力を獲得すべく、これらの企業に注目しているのではないだろうか。
【翻訳:田中留美、編集:EDN Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「お皿サイズ」のAIチップがGPUの限界を超える? 4兆トランジスタを集積
数兆パラメータを備えるAIモデルを、既存のGPUベースのシステムよりも高速かつ高効率で実行できるとして、ウエハースケール技術に期待が高まっている。米国カリフォルニア大学リバーサイド校(UCR)のエンジニアチームは、過熱や過度な電力消費なしで大量のデータ移動が可能な、フリスビーサイズの半導体チップを開発した。
200G/レーンのCPOが光インターコネクトの限界を押し広げる
コパッケージドオプティクス(CPO)は、ハイパースケールデータセンターやAIのワークロードに対応した、次世代インターコネクトの基準を確立する新しいソリューションだ。Broadcomは、レーン当たり200Gの伝送速度を実現すると同時に、熱設計、取り扱い手順、ファイバー配線、全体的な歩留まりも大幅に改善する、第3世代CPO技術を開発したという。
Intel「EMIB-T」で先進パッケージング促進へ
Intelが2025年4月に開催したイベント「Intel Foundry Direct Connect 2025」で注目度が高かったのが「EMIB-T」だ。チップ間をより効率的に接続できるようになるとする。
EDA大手3社、Intel「18A」向けツールでそろい踏み
EDAベンダー大手3社による、Intel「18A」プロセス向けツールが出そろっている。3社は、2025年4月に開催された「Intel Foundry Direct Connect 2025」にてAI主導のツールを紹介し、注目を集めた。
デジタルキー商用化への第一歩 NXPがCCC認証を取得
NXP Semiconductorsのデジタルキー設計ソリューションが業界団体「Car Connectivity Consortium(CCC)」の認証を受けた。デジタルキー商用化が近づいたといえる。
2025年、センサー設計のトレンドは「AIとの融合」
センサー設計において、性能向上や付加価値向上のためのAI/ソフトウェアの重要性が増している。「CES 2025」の展示内容から、AIやソフトウェアを利用したセンサー設計の事例を紹介する。
