インタビュー
LTspice開発者は、なぜ「QSPICE」も作ったのか:RF回路シミュレーション最前線(3/3 ページ)
回路シミュレーションソフトLTspiceやQSPICEの開発者として知られるQorvoのアナログエンジニアMike Engelhardt氏が、QorvoにおけるQSPICEの開発やそれがRFやミックスドシグナルにおけるシミュレーションに与えた影響について語った。
ミックスドシグナルを取り扱う設計者にとってのメリット
――ミックスドシグナルを取り扱う設計者にとってのメリットは何ですか?
Engelhardt氏 QSPICEが搭載しているミックスドシグナルシミュレーション機能は非常に優れていて、あらゆる設計者がその高度な機能を使用できる。C++やVerilogをネイティブにコンパイルして実行可能なオブジェクトコードに変換でき、そのコードがシミュレーション中に実行される。そのため、デジタル論理は実際のハードウェアよりも高速に評価できる。ただし、5GHz未満で動作するプロセッサで5GHzの高周波信号をシミュレーションする場合は、高速にはならない。
操作も簡単だ。回路図にボックスをドラッグし、コードを入力して実行するだけだ。QSPICEは必要なコンパイラを全て標準搭載していて、設計者は複雑なアナログとデジタルの相互作用を簡単かつ高速にシミュレーションできる。
ギガヘルツ帯域の課題に取り組んでいるRF設計者や、統合論理シミュレーションを必要としているミックスドシグナル設計者にとって、QSPICEは飛躍的な進化を遂げた回路シミュレーション技術だといえるだろう。
筆者:Shawn Luke氏
DigiKeyのテクニカルマーケティングエンジニア。DigiKeyは3000社を超える優良ブランドメーカーから1700万点を超える部品を提供している。
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