タイマーIC「LM555」は何でもこなす――サーモスタットを実現:Design Ideas アナログ機能回路
今回は汎用性の高いタイマーIC「LM555」を、その通常の役割であるアナログ発振器やタイマーとはかなり異なる回路へと変化させるアイデアだ。ここでは、NTCサーミスターと抵抗を組み合わせ、抵抗で設定するON/OFFサーモスタットを構成している。
もしあなたのお気に入りの道具がハンマーであれば、あらゆる問題がクギに見えるだろう※)――アブラハム・マズロー
アナログタイマーIC「LM555」および「LMC555」をいじることが多い筆者にとって、マズローはこの有名な警句をまさに私のために書いたのかもしれない。そして今回もまた、そうなった。Bang-Bang制御(オンオフ制御)だ。
※)一般的には「If you only have a hammer, you tend to see every problem as a nail.(訳:ハンマーしか持っていなければ、全てがクギに見える)」とされるが、本稿では筆者の表現をそのまま用いています。
図1の回路は、汎用性の高い555を、その通常の役割であるアナログ発振器やタイマーとはかなり異なる回路へと変化させている。ここでは、NTCサーミスターと、1本(あるいはオプションで2本)の抵抗を組み合わせ、抵抗で設定するON/OFFサーモスタットを構成している。加熱用にも冷却用にも容易に構成できる。
図1:基本的なBang-Bang制御の加熱構成。設定温度におけるサーミスター抵抗はRb/2だ。オプションのRhは所望の温度ヒステリシスを設定する。出力は最大15V、300mA(4.5W)【クリックで拡大】
その動作は次の通りだ。
555の機能の1つでありながら(少なくとも十分に文書化されていない)特性として、図1のようにThreshold(ピン6)をVddに接続した場合の挙動がある。このときTrigger(ピン7)は反転アナログコンパレーター入力として機能し、Trigger<Vdd/3であればOutput(ピン3)とDischarge(ピン7)をハイに、Trigger>Vdd/3であればローに駆動する。
この動作を図のようにNTCサーミスターとバイアス抵抗Rbと組み合わせると、簡単で実用的なサーモスタットが得られる。サーミスターの温度が設定値より低い(サーミスター抵抗>Rb/2)場合、負荷(例えば抵抗ヒーター)への電力供給がONになる。温度が高い場合(サーミスター<Rb/2)は電力がOFFになる。
さらに重要な点がある。サーモスタットの精度は絶対電圧ではなく抵抗比のみに依存するため、電源V+は安定化されている必要がない。実際、負荷がリップルの影響を受けない場合(例えば抵抗ヒーターは問題としない)、フィルタリングすら不要である。
さらに、図2のようにサーミスターと抵抗の位置を入れ替え、冷却ファン(あるいはペルチェクーラー)を接続すると、温度制御の極性が反転する。これによって最低温度ではなく最大温度を一定に保つようになる。出力負荷が誘導性(例えばファンモーター)であっても、誘導性サージの心配は不要だ。LM555の出力ピンにはキックバック保護が内蔵されている。
ヒステリシス(dT)が必要な場合、典型的なNTCの温度係数(約4%/℃)に対して、簡便(ただし近似的)な目安としてRh=680k/dT℃とすれば良い。
Design Ideas〜回路設計アイデア集
【アナログ機能回路】:フィルター回路や発振回路、センサー回路など
【パワー関連と電源】:ノイズの低減手法、保護回路など
【ディスプレイとドライバー】:LEDの制御、活用法など
【計測とテスト】:簡易テスターの設計例、旧式の計測装置の有効な活用法など
【信号源とパルス処理】:その他のユニークな回路
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
超定番タイマーIC「555」の周波数直線性を改善する
今回の回路アイデアは、超定番タイマーIC「555」の周波数直線性を改善するものだ。
10Hz〜1MHzで周波数を可変する「のこぎり波発振回路」
発振回路を用いてアナログののこぎり波(サートゥース)波形を生成する方法は数多く存在する。本稿では、単一の電源電圧レールを用い、10Hz〜1MHzの範囲で周波数を可変できるバッファー付き信号を生成する方法を紹介する。
定番「TL431」2個の合わせ技、多用途な電流ミラー
今回の回路アイデアは、シャント電圧レギュレーター「TLx431」を2個組み合わせて、プログラマブルな利得を持つ電流ミラーを作るというものだ。
万能のタイマーIC「LMC555」がまだ驚かせる、可変抵抗1個で4桁可変
定番のCMOSアナログタイマー「LMC555」の周波数を可変抵抗1個で10Hz未満から100kHz超まで広げる回路を紹介する。
多数の信号線に対するコモンモード電圧対策
コモンモード電圧(CMV)に起因する誤動作や性能劣化を防ぐため、信号の入出力に差動型の計装アンプを使用する手法が用いられる場合が多い。しかし、この方法には信号線ごとに専用のアンプ回路を要するという欠点がある。今回は、この欠点を改善しようと考案した回路を紹介する。
多数の信号線に対するコモンモード電圧対策
コモンモード電圧(CMV)に起因する誤動作や性能劣化を防ぐため、信号の入出力に差動型の計装アンプを使用する手法が用いられる場合が多い。しかし、この方法には信号線ごとに専用のアンプ回路を要するという欠点がある。今回は、この欠点を改善しようと考案した回路を紹介する。

