30年前に関わった半導体用温調器、調査で判明した設計の盲点:Wired, Weird(2/4 ページ)
修理を指導している友人から、技術支援の依頼があった。聞けば、筆者が30年ほど前、半導体製造装置の業務に従事していた時に関わった温調器に関する問題だったため、少し踏み込んで調べてみることにした。
30年前の設計を見直す
Google AIでHブリッジ回路の設計上の注意事項を確認してみた。Hブリッジ回路では、上下のスイッチ(トランジスタ)を同時にONにすることは避けなければならない。これは、電源からGNDへ直接電流が流れる「貫通電流(シュートスルー)」が発生し、回路が破損する恐れがあるためだ。 そのため、一方のスイッチをOFFにしてからもう一方をONにするまでの間に、両方のスイッチが確実にOFFとなる「待ち時間(デッドタイム)」を設けることが必須とあった。
しかし、図2右では、4個のFETのゲートとソース間には、赤丸の4個のZD(ツェナーダイオード)のみが接続されている。これはFETのゲートを保護するためのもので、ゲート電圧を急速に放電する回路は考慮されていない可能性が高い。FETのゲートの放電がしっかりしていないと、同じ側のハイ側とロー側の2つのFETが同時にオンとなり、電源を短絡させて電源やFETが過熱し劣化する恐れがあるため、少し心配だ。参考として、図2の基板と同様に、FETのゲートに4個のZDを配置した、ペルチェ素子の一般的な駆動回路例を示す(図4)
図4は4個のZDでゲート電圧を保護したHブリッジで、一般的なペルチェ素子の簡易な駆動回路例だ。
この温調器では、Vcc電圧が高く、ゲートの電圧を下げるために4個のZDが使用されていると考えられた。しかし、図4右に記載したゲートの急速放電回路はなく、待ち時間(デッドタイム)が考慮されていない可能性がある。急速放電回路は、ゲート入力電圧が低下した際にトランジスタでゲート電荷を速やかに放電するための回路だ。これが無いと貫通電流が発生し、FETや電源の劣化につながる恐れがある。
たまたま、現場にあった修理品の不良動作の温調器を見せてもらったので、FETが正常かどうかをテスターで動作を確認した。電源を切った状態で測定したところ、図2中央の2個のFETはドレインとソースが短絡しているように見えた。しかし、後日、友人から連絡があり、FETを再確認したところ正常に動作していたと連絡があった。予想通り、ゲート電圧の放電に時間がかかる回路だった。ゲート電圧が短時間では放電されないため、電源を切った後でもテスターでは導通が確認されたと思われた。
なぜFETのゲート電圧を急速に放電する回路が採用されていなかったのか、大きな疑問が残った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

