抵抗やコイル(インダクタンス)、コンデンサなどが存在する電気回路で、電圧信号と電流信号が時間とともに、どのように変化するのか。その様子を分かりやすく解説します。
前回(第4回)は、抵抗とインダクタンス(コイル)を直列接続した回路で過渡現象をご説明しました。今回は抵抗とコンデンサ(キャパシタ)を直列接続した回路を取り上げます。
抵抗とコンデンサの表記と呼び方
始めは、抵抗とコンデンサの表記と呼び方をおさらいしましょう。抵抗については前回も説明しましたが、復習を兼ねて今回も説明しておきます。
抵抗はレジスタンス、またはレジスタと呼ぶこともあります。ただしレジスタは論理回路の「レジスタ」と紛らわしいのでお薦めしません。「抵抗」あるいは「抵抗器」、「抵抗素子」と表記しましょう。
コンデンサはキャパシタ、またはキャパシタンスと呼ぶこともあります。コンデンサとキャパシタの違いは明確ではありません。いずれも静電容量を主成分とする素子です。受動部品ではコンデンサと呼ぶことが多く、半導体チップ(ダイ)内部の回路素子ではキャパシタと呼ぶのが普通です。ボード設計ではコンデンサを扱い、半導体回路設計ではキャパシタを扱うとも言えます。
記号で表記するときは、「抵抗」はR(アール)、「コンデンサ(キャパシタ)」はC(シー)と略記します。電気回路に関する会話ではそれぞれ、「アール」および「シー」と略して呼ぶことが珍しくありません。
値の高低と大小
抵抗の定性的な値は、「高い」、「低い」と表記するのが普通です。高抵抗、低抵抗などと記述します。「大抵抗」とは書きません。ところが電気回路の会話では「抵抗値が大きいので」などと「大小」を使うことが少なくありません。もちろん「抵抗値が高いので」と発言しても何の問題もないし、実際、聞くことがあります。
一方、コンデンサの定性的な値は、「大小」で表記することが多いのです。「大容量のコンデンサ」、「小容量のキャパシタ」などと記述します。会話でも「大容量コンデンサを外付けして」といった、「大小」での表現が普通に聞かれます。「高容量」、「低容量」といった言葉は、会話では聞かれることが少ないです。
ところで、英文では抵抗とコンデンサはいずれも「高低」で表記します。高はhigh、低はlowです。low resistance、high capacitanceといった具合です。「大小」では表記しません。
乾電池にRとCを直列接続したときの電流の変化
それではRとCを直列に接続した簡単な電気回路で、電圧信号と電流信号のふるまいを考えてみましょう。
乾電池や二次電池などの直流電圧源Vと、スイッチSW、抵抗R、コンデンサCが直列に接続された閉回路を想定します(図1)。始めはスイッチSWが開放(オフ)状態です。コンデンサCには電荷が蓄えられていないものとします。
ここでスイッチSWを短絡(オン)状態にします。直流電圧源Vの電圧Vが抵抗RとコンデンサCに加わります。抵抗Rの両端に加わる電圧をvR、コンデンサCの両端に加わる電圧をvCと定義しますと、VはvRとvCの合計値で、常に一定です。
V=vR+vC
コンデンサCの両端に加わる電圧vCは、閉回路を流れる電流iの時間積分に1/Cを掛けた値となります。抵抗Rの両端に加わる電圧vRは、電流iにRを掛けた値です。スイッチSWをオンにすると、電流iの時間積分がゼロから始まります。したがってスイッチSWをオンにした直後は、VとvRはほとんど等しくなります。vCはほぼゼロです。
電流iはどうなっているでしょうか。スイッチSWをオンすると、電流iは一気に流れ出し、コンデンサCを充電し始めます。ここで電流iの初期値はV/Rです。
電流i(時間はゼロ)=V/R
コンデンサCが充電され始めると電流iは減少します。vCが増加し、vRが減少します。電流iは時間の経過とともに減少しますが、電流の時間積分は増加していきます。そして時間が無限大に達すると、電流iはゼロになります。このときVはvCに等しくなります。
電流i(時間は無限大)=0
電圧V(時間は無限大)=vC
vR(時間は無限大)=0
ここでCとRの大きさが、電流iがゼロに近付く早さ(定常状態に近付く早さ)を決めます。CとR、V、iに関する微分方程式を解くと、電流iは「マイナス(1/(C×R))」を係数とする指数関数で時間tとともに減少していくことが分かります。このとき、「C×R」を時定数τ(タウ)と呼びます。時間tが時定数τのときに、電流iは初期値のおおよそ0.37倍の値となります。
時定数τが小さいと、電流iは時間経過とともに急速に減少します。時定数τが大きいと、電流iは時間経過とともにゆっくりと減少します。
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