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20年と短命だった「PowerPC」、旧Freescaleが粘るもArmに勝てずマイクロプロセッサ懐古録(18)(1/3 ページ)

今回はApple/IBM/Motorolaの3社が共同開発したアーキテクチャ「PowerPC」を紹介する。「IBM 801」を源流とするこのMPUは、系譜がさまざまに広がり、組み込み向けでは大ヒットするも、Armには太刀打ちできなかった。

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PowerPCの源流

 前回「組み込みで命運つなぐも限界 市場から消えたNEC「Vシリーズ」」の冒頭で「残りの2社である三菱電機と」とか書いておきながら何でPowerPCなんだ?と言われそうだが、いずれ三菱の話もご紹介したい(今回はちょっと調査時間が足りなかった)。


後述する「PowerPC 601」。日本語版ウィキペディアのBaz1521さん - 原版の投稿者自身による著作物 (Original text: Baz1521 撮影), CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1438866による[クリックで拡大]

 ということで「PowerPC」の話。PowerPCの源流は、IBMが1978年に完成させた「IBM 801」である。このIBM 801が完成するまでの話は以前ITmedia Newsに書いた(のでここでは割愛するとして、そこからの話を)。IBM 801はR&D(Thomas J. Watson Research Center)のプロジェクトであったが、これを製品に応用しようとしたのがOPD(Office Products Division)で、IBM 801をベースとしたROMP(Research OPD MicroProcessor)というチップを開発してワープロなどに使おうとした。1981年に完成したROMPは2チップ構成で、IBMの2μmプロセスで製造され、4.3MIPSほどの性能を発揮するとされたが、なぜかワープロ用のはずがワークステーション向けに使われることになり、商用的には大失敗に終わった。

 ただワークステーション向けということでUNIX(AIX)が移植された事で、今度は逆にAIX用の高速なプロセッサを開発しようという話になり、AES(Advanced Engineering System)という新しく結成されたBusiness UnitにIBM 801のチームが再集結。AMERICA architectureなるコード名で設計されたRIOS-1(10チップで構成)が1990年にPOWER 1として完成する。このPOWER 1はその後RIOS.9→POWER1+→POWER1++とマイナーバージョンアップを繰り返してから1993年にPOWER 2が登場。4命令のSuperScalarが搭載され、またMCMを使って「見かけ上は」ワンチップ化(ただしパッケージサイズは63mm×63mm)も果たす。この後POWER系列はPOWER 3/4/...と進化して行き、最新のものは2025年に発表されたPOWER 11である。当初はワークステーション以上向けという位置付けであったが、現在ではもうメインフレーム向けになっており、これにふさわしい構造に生まれ変わっている。

Apple、IBM、Motorolaで共同開発

 このPOWERの派生型として生まれたのがPowerPCである。これはAppleとIBM、Motorola(Freescale Semiconductor、以下Freescale)の3社の共同開発と言う形で1991年にAIM Allianceが形成され、ここで開発された。AppleはMC68040の後継製品に困っており、IBMはPOWERをベースにx86マーケットの浸食を狙い、そしてMotorolaはやはりMC68040の後継の開発につまずいていた。MC68050はキャンセルされ、MC68060はまだ当分先、そしてMC88000というRISCの開発は難航していた。そこで3社でPOWERをベースとしたPCおよびEmbedded向けのCPU開発を行い、これを利用しよう、というわけだ。

PowerPCの系譜

 さて、ここからの展開を延々と話すと長くなるので簡単に説明する。図1がそのPowerPCの系譜である。まず1993年、POWER 1をベースにPowerPC 601が発表された。これに先立ちAIM AllianceはPowerPC ISAを策定しているが、実はPowerPC 601はこのPowerPC ISAに完全準拠していない。そもそもこのPowerPC 601、設計開始から1年ほどで出荷という猛烈なスピードでリリースされた。なので命令セットはPOWER 1のサブセットである。1994年のPowerPC 601+を経て、1994年には省電力向けにやや簡素化した(といっても3命令同時実行のOut-of-Order構成ではある)と共に、PowerPC ISAをフルサポートしたPowerPC 603系列と、4命令同時実行のOut-of-Order構成で高性能を狙ったPowerPC 604が登場する。このPowerPC 604の系列は64bit化したPowerPC 620を経て、さらに高性能化したPowerPC 630が開発されるものの、これはPOWER3としてPOWER系列になってしまった。そんな訳でこのPowerPC 603eが事実上この後に続くPowerPCの元祖とでもいうべき存在になった。

図1:PowerPCの系譜
図1:PowerPCの系譜[クリックで拡大]

 Embedded向けの話はこの後するとしてまずはApple向けを整理すると、このPowerPC 603eをベースに高性能化したものがPowerPC 740/750である。違いはPowerPC 750がチップ外にL2を搭載可能という、Pentium IIと同じ方式を取った(740はL2未サポート)ことである。いわゆるPowerPC G3で、この後IBMの手でPowerPC 745/755や750CX/CXe、750FX、750GXと改良が成されていった。一方PowerPC 740をベースにFreescaleによって内部構成の改良やAltiVec(SIMDエンジン)搭載などの変更が行われたのがMPC7400系列で、いわゆるPowerPC G4である。こちらはFreescaleの手で、MPC7410/7450/7447/7457と派生型が生まれた。

 これとは別に、IBMが、POWER 4をベースにPowerPC化したものがPowerPC 970で、PowerPC G5の世代である。こちらも970FX/970MP/970FXと派生型が生まれたが、2006年にAppleがPowerPCからIntelに鞍替えした事で、この系列の製品展開は終了する事になった。

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