第52回 デジタル信号処理(DSP)設計の基礎知識を学ぶ 〜ビデオ信号処理編〜:FPGA Insights
ビデオ信号処理技術はさまざまな用途で応用されている。テレビ会議システムや放送機器、監視カメラなどにとどまらず、軍関係の機器にも使われている。また、われわれが日常的に使うATM装置やプリンタの操作パネルなどにも最新のビデオ信号処理技術は欠かせない。
増大し続ける映像情報
米国の調査会社によれば、米国の一般世帯では、2014年までに5〜10種類のWeb対応CEデバイスを所有すると予測されている。この中にはスマートフォンやタブレットPCなどが含まれる。一方、米IT企業の経営者のように、「映像情報は今後4年以内に主なコミュニケーション手段となり、ITの基本形態となる」とし、「これまで主流だった文字情報に取って代わり、『YouTube』や『ニコニコ動画』などビデオコンテンツがネットワーク・トラフィックの90%を占める」と言い切る人も少なくない。
このように、映像情報の比率が高まる中で、電子機器でもその対策が迫られている。フォーマット変換や新しいインタフェース規格のサポート、マルチスクリーン化などへの対応だ。こうした技術の進化、市場の要求に対して、システム設計者はASSPの開発を待っていては製品の開発に遅れが生じてしまう可能性もある。
現在はモバイル系の映像機器でも、表示部はフルHDやHDの画質に対応している場合がある。しかし、古い映像コンテンツの中にはSDクラスのこともある。この場合には、フォーマット変換が必要だ。これらの課題を解決するにはフォーマットを変換するためのICチップが必要となるが、FPGAはそれを比較的容易に実現する有効な手段の1つとなる。
進化するビデオ信号処理技術とIPコア活用
こうした中でアルテラは、ビデオ・フレームワークにおけるリーダーシップを発揮している。これまでに50社を超えるユーザーで100ソケット以上に採用されている。2011年はさまざまな用途で、多くの顧客に対してビデオ/画像処理(VIP)スイートのライセンスを行った。
アルテラのビデオ信号処理に向けたビデオ・デザイン・フレームワークは、FPGAおよびカスタムIP(Intellectual Property)コアと各種ビデオ・インタフェースのシームレスな統合環境を提供するほか、FPGAを用いたビデオ信号処理を迅速に実現することができる。本稿ではビデオ信号処理の基礎と、FPGAをベースとしたビデオ・デザイン・フレームワークについてその概要を紹介する。
ビデオ信号処理の80%をカバー
ビデオ信号処理の機能は、いくつかのブロックに分けることができる。この中で汎用的な処理を実行する回路については、ICチップベンダーなどでサポートされているIPコアなどを利用すれば、システム設計者は開発の負荷を軽減することができる。その分、システムレベルの付加機能を高める設計に開発リソースを集中することができることになる。浮動小数点に対応したDSP機能がICチップ側で提供されていれば、用途に最適なデジタル信号処理のためのカスタム・アルゴリズムをより柔軟に実現できる。
図1にビデオ信号処理の一般的な流れを示す。まず入力映像からノイズを除去して、利用される機器に適したデータ・フォーマットへと変換し、その上で表示機器に合わせたデータの転送と加工を行う。これら一連の流れは大きく3つのステップに分けることができる。「ビデオ前処理」、「後処理」そして「表示と転送」だ。前処理には色補正処理やノイズ除去処理、ワイド・ダイナミック・レンジ処理、エッジ強調処理などがある。後処理にはカラー・スペース・コンバータ、クロマ・リサンプラ、ビデオ・クリッピング、回転、スケーリングとミキシングなどの機能が必要だ。表示と転送ではスケーリングやグラフィック・オーバレイ、ガンマ補正、アルファ・ブレンディングといった処理が求められる。
こうしたビデオ信号処理は、いくつかの規格に乗っ取って処理されることが多い。前述の通り、アルテラはFPGAのIPコアとして、VIPスイートを用意している。これらのVIPスイートを活用すれば、一連の処理に必要な機能の80%をカバーすることができる。
ビデオ・インタフェースと一口で言っても、用途によって使われる規格は異なる。一例だが、テレビ分野ではコンポジット・ビデオ信号、Sビデオ信号、コンポーネント・ビデオ信号などがある。パソコン分野ではVGAやDVI(デジタル・ビジュアル・インタフェース)、放送系ではSDI(シリアル・デジタル・インタフェース)などが用いられている。こうした中で、コンテンツの保護機能も含めてインタフェース規格は収束しつつある。その代表的な規格としてテレビ関連の「HDMI」やパソコン分野の「Display Port」を挙げることができる。
リファレンス・デザインが充実
それでは、さまざまな用途で拡大し続けるビデオ信号処理のニーズに対して、システム設計者はどのように開発に取り組めばいいのか。その解の1つがFPGAを活用したビデオ信号処理用チップの開発だ。アルテラは、FPGAをベースとしたビデオ・デザイン・フレームワークを提供している。
アルテラが提供するビルディング・ブロックIPコアを使うことで、開発工数を減らし、開発のスピードをアップすることができる。IPコアはオープン・インタフェース規格であるAvalon-STインタフェースに対応しており、カスタムIPや市販のIPを組み合わせることができる。また、システム・レベル・ツールおよびデザイン手法も提供されている。このソリューションによって、組み込みマイクロコントローラ「Nios® II プロセッサ」や「ARMコア」を内蔵したSoCにも対応することができる。提供されるVIPスイートは2006年に8コアだったが、Quartus® II 開発ソフトウェアのアップデートとともに改善され、現在ではその数も20コアとなった(VIPスイートのIP MegaCoreファンクションを参照)。VIPスイートは開発期間の短縮に大きく貢献している。
最大1080pのビデオ・ストリームのフォーマット変換を実行するFPGAリファレンス・デザインなども用意されている。また、ビデオ開発キットも充実している。近くアルテラ製のFPGA「Arria® V GX」を実装したスターター・キットが提供される予定だ。
関連情報
提供:日本アルテラ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2014年3月31日
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