パワー半導体のゲート電荷や容量なども容易に測定、アジレントのアナライザ:アジレント・テクノロジー Agilent B1506A
アジレントのAgilent B1506Aは、パワーモジュールやインバータ、およびこれらを用いたシステムに実装されたパワー半導体素子の特性を測定することができるパワーデバイスアナライザである。IV特性に加えて、トランジスタ端子間容量やゲート電荷など、あらゆるパラメータを容易に測定できるようにした。
アジレント・テクノロジー(以下、アジレント)は2014年5月、パワーモジュールやインバータ、およびこれらを用いたシステムに実装されたパワー半導体素子の特性を測定することができるパワーデバイスアナライザ「Agilent B1506A」を発表した。IV特性に加えて、トランジスタ端子間容量やゲート電荷などあらゆるパラメータを、容易に測定できるようにした。inTest製装置と組み合わせて用いれば、車載用途などで必須となる−50〜250℃環境におけるパワー半導体素子の特性評価を行うことができる。
同社はこれまで、パワーデバイスアナライザとして、「Agilent B1505A」を提供してきた。この測定装置は、パワー半導体素子の特性や品質をウェハーレベルで検査できる他、パッケージング後のテストやインテリジェントパワーモジュールの評価などにも使われている。最大電流は1500A、最大電圧は10kVの範囲内でパワー半導体のパラメータを測定することができる。どちらかといえば、パワー半導体素子の開発/評価に向けた製品である。
これに対してB1506Aは、主にパワー半導体素子を応用した製品の開発/評価用途に向ける。パワーモジュールやインバータ/コンバータ、およびこれらを用いたシステム製品などの特性測定に必要な操作をできる限り簡素化した。最大電流は1500A、最大電圧は3kVの範囲内で測定できる。特にB1506Aは、従来のオン抵抗やリーク電流、飽和電圧といった測定項目に加えて、駆動損失の指標となるゲート電荷や、スイッチング損失の指標となるトランジスタ端子間容量などの測定も容易に行えるようにした。
スイッチング速度が向上したことによって、電力効率を改善するにはこれまでのオン抵抗よりも、駆動損失やスイッチング損失が大きな影響力を持つようになったからである。しかし、パワー半導体素子ベンダから提供されるゲート電荷や容量のデータは、一定の条件で測定されたデータシートのデータであり、現実的な動作データはパワー半導体素子/モジュールを利用するシステム設計者が個別に測定して評価するのが一般的であった。
B1506Aは、システム設計者がパワー半導体素子の評価に必要となる実際の動作データを、比較的容易な操作で測定することを可能とした。例えば、トランジスタ端子間容量は、入力容量、出力容量、帰還容量の3種類を測定する。従来は別に部品を新たに追加したり、ケーブルを測定項目に応じて接続変更したりする必要があった。B1506Aは装置内部に切り替え用スイッチを実装しており、接続を自動的に変更して3項目を測定することができる。このため、測定作業を簡素化することができるという。
さらにB1506Aは、inTest製の「Thermostream」や「Thermal Plate」と連動させることで、低温から高温まで温度環境を変化させてパワー半導体素子の特性評価を容易に行うことが可能だ。Thermostreamと組み合わせると−50〜220℃、Thermal Plateと組み合わせれば常温〜250℃の温度ストレスを加えて試験することができるという。
B1506Aは、2014年7月から販売を開始し、2014年9月に出荷を始める。製品は電流が20Aモデルの「B1506AオプションH21」、500Aモデルの「B1506AオプションH51」および1500Aモデルの「B1506AオプションH71」を用意した。参考価格(税別)は20Aモデルで1250万円、1500Aモデルで1650万円としている。
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