スルーレート制御で電源のEMIを減らす:Design Ideas パワー関連と電源(2/2 ページ)
オフラインのスイッチング電源が放射する電磁雑音(EMI)は電源回路全体に影響を与えるため、さまざまな問題が発生する。基板レイアウトは特に重要だ。今回は、電圧と電流のスルーレートを閉ループ回路で制御することで雑音を低減する回路を紹介する。
出力電圧雑音に高調波成分が含まれない
交流(AC)ラインにおける伝導性EMI雑音を計測すれば、この回路の利点を理解できるだろう。IC1を一般的なスイッチング電源用制御ICに置き換えた場合と比較してほしい。この2つの回路の差は、スイッチング電流と電圧のスルーレートを能動的に制御しているかどうかという点だけだ。
図2は、2つの回路の周波数スペクトラムである。IC1を用いた回路のスペクトラムは、FCCクラスBの規制値を十分に満足している。しかし一般的なスイッチング電源用制御ICを採用した回路では、規制値を大幅に超えてしまった。
図2:EMIの測定結果 (クリックで拡大)
(a)は今回の回路、(b)は一般的なスイッチング電源用制御ICを使った従来回路のEMIを測定した結果である。いずれも横軸に、FCCクラスBの規制値を示した。(a)は規制値を十分に満足しているが、(b)は大幅に超えてしまった。
図1の回路には、もう1つメリットがある。出力電圧雑音は基本波のリップルだけで、高調波成分が含まれないことだ。リップル電圧を300μV以下に抑えたいなら、出力にLCフィルター(100μHと100μF)を追加するとよい。
一般的なスイッチング電源用制御ICを使った回路では、出力フィルターを構成するインダクターの寄生容量を介して、高周波雑音がほとんど減衰されずに通過してしまう。このため出力電圧には、多くの雑音が重畳される。
Design Ideas〜回路設計アイデア集
【アナログ機能回路】:フィルタ回路や発振回路、センサー回路など
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【計測とテスト】:簡易テスターの設計例、旧式の計測装置の有効な活用法など
【信号源とパルス処理】:その他のユニークな回路
※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
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