LEDを光センサーとして使用した自動点灯回路:Design Ideas ディスプレイとドライバ
LEDに光を照射すると、大きな起電力が発生する。この光起電力効果を利用し、LEDを光センサーとして使う自動点灯回路を紹介する。
LEDに光を照射すると、大きな起電力が発生する(光起電力効果)。図1に示したのは、その光起電力効果を活用した回路の例である。LEDの発明から30年以上がたち、その発光効率は着実に向上してきた。そうした高効率の製品の1つが、図1で使用している米Avago Technologiesの赤色LED「HLMP-EG30-NR000」(D1)である。光起電力効果の小さい赤色LEDでも機能するが、当然、起電力は小さくなる。
LEDは、オフィスや実験室のような適度な明るさの下では光起電流によって発光し、周囲が暗いときには発光しない。この回路は、光センサーではなく、LEDによって周囲の明るさを検出し、LED自身のオン/オフを自動制御する。具体的には、LEDの周囲が暗くなるとオン(点灯)になり、明るくなるとオフになるように構成してある。この処理は、LED自身と、オペアンプ(IC1)、単安定(ワンショット)マルチバイブレーター(IC2A)、スイッチ(Q1)によってLEDの電流を制御することで実現する。
図1の回路の場合、周囲が明るいと、D1は4.7MΩの抵抗R3の両端に50mV〜100mVの電位差を発生させる。オペアンプIC1はコンパレーターとして機能し、D1によって生成された電圧と、約50mVの基準電圧を比較する。この基準電圧は、IC1の2番端子に接続している分圧抵抗R1とR2によって設定する。
周囲が暗くなると、D1の生成電圧が低くなる。基準電圧の50mVを下回ると、オペアンプの出力電圧がローレベルまで低下し、IC2Aのトリガーとなる。これによりIC2Aがパルス(ハイ)を出力し、それによってトランジスタQ1がオンになる。その結果、IC2Aの出力がローになるまでの約3ミリ秒の間、LEDが点灯する。
暗い室内では、このサイクルが200Hzで繰り返され、LEDが点滅する。なお、点滅が速くなると、LEDは点灯し続けているように見える。
この回路の消費電流は、明るい場所では、主として分圧回路部分の電流3.6V/(160kΩ+2.2kΩ)=22μAとなる。点灯時に数ミリアンペアを消費するLEDを使った場合でも、1Ahrの電池によって数カ月間、動作するだろう。また、R1とR2の値を大きくすれば、常時消費される電流を減らすことができる。その場合、基本的に十分に明るい環境で使用するのであれば、1Ahrのリチウムイオン電池の保管寿命くらいまで使い続けることが可能である。
Design Ideas〜回路設計アイデア集
【アナログ機能回路】:フィルタ回路や発振回路、センサー回路など
【パワー関連と電源】:ノイズの低減手法、保護回路など
【ディスプレイとドライバ】:LEDの制御、活用法など
【計測とテスト】:簡易テスターの設計例、旧式の計測装置の有効な活用法など
【信号源とパルス処理】:その他のユニークな回路
※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事の中から200本を厳選し、5つのカテゴリに分けて収録した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- GUGENに挑戦! “点滅記憶回路”を使った点滅ライト
今回は、2015年末に行われた電子工作コンテスト「GUGENコンテスト2015」に出品したオリジナル回路『点滅記憶回路』を使ったLED点滅ライトを紹介する。便利な2端子回路であり、さまざまな応用が期待できる。コンテスト参加の裏話も含めて、点滅記憶回路の仕組みをみていこう。 - LED照明のリスク
LED照明はよいことばかりではない。これまでの照明にはなかった落とし穴が幾つかある。例えば、発光タイミングの問題や発熱が少ないことによる問題、力率の問題だ。低力率に対応するには、LEDの電源回路に工夫が必要だ。 - 電源ICを使ったLEDの定電流駆動回路
LEDが光源として注目を浴びている。従来に比べて、効率や信頼性が高い場合が多いからだ。スイッチング電源を使えば、バラスト抵抗を用いた電流の制限方法に比べてさらに効率を高められる。 - 不良品でも諦めない! “安売りハロゲンセンサーライトのLED化改造”奮闘記
筆者は、ホームセンターで安売りされているハロゲンセンサーライトを手に入れ、光源をLED化する改造を試みた。しかし、LEDは点灯しない。不良品をつかまされた筆者は、改造して返品もできないセンサーライトの不具合原因を突き止め、LEDを点灯させる!