マイコン周辺回路設計テクニック ―― 電源編:Q&Aで学ぶマイコン講座(31)(4/4 ページ)
マイコンユーザーのさまざまな疑問に対し、マイコンメーカーのエンジニアがお答えしていく本連載。今回は、中級者から上級者の方からよく質問される「マイコン周辺回路設計テクニック ―― 電源編」です。
2)デカップリングコンデンサーの種類
次に紹介する事例は、マイコンの電源ではなく、マイコンに内蔵されているA-Dコンバーターの参照(基準)電圧の回路に使用したデカップリングコンデンサーのトラブル例です。
電源制御回路にSTM32F303が採用されました。STM32F303は電源電圧を検出し、安定化させるためのフィードバック制御に使われています。トラブルはA-Dコンバーターの変換結果の誤差が時々大きくなって、変換結果が安定しないという事象です。高精度の電圧計でアナログ電源、被測定電源を測定しても、どちらも安定していて、電圧値は全くバラつかないのに、変換結果はバラついて、スペックから外れてしまいます。アナログ電源、グランド、被測定電源の電圧は安定していたので、原因として考えられるのはA-Dコンバーターの参照電圧源しか残っていません。参照電源の電圧を観察して見ると、案の定、安定していません。そこで、参照電圧源のデカップリングコンデンサーを強化することにしました。
セラミックコンデンサーやタンタル電解コンデンサーを追加してみたのですが、一向に電圧が安定しません。首をひねりつつも、実験室にあったあらゆるコンデンサーを取っ換え引っ換え試した結果、10μFの電解コンデンサーを接続すると、安定することが分かりました。
教訓
電解コンデンサーはデカップリングコンデンサーにはあまり使われませんが、低周波数のノイズを除去することは知られています。
実際のオシロスコープの観測波形を図5に示します。
図5(a)は誤差が大きい場合で、図5(b)は誤差の小さい場合です。比べてみると、図5(a)には小さなノイズも観測されますが、それが大きなうねりに乗っているのが分かります。このうねりのノイズが電解コンデンサーによって除去された結果、A-Dコンバーターの変換結果が安定するようになりました。
デカップリングコンデンサーにはノイズに合ったコンデンサーの種類を選択することが重要だという良い例です。
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