コンバーターの回路方式:DC-DCコンバーター活用講座(4) 電力安定化(4)(3/3 ページ)
今回の記事では、同期式と非同期式の違いの他、2段式やマルチフェーズといったコンバーターの回路方式について説明する。
マルチフェーズDC-DCコンバーター
マルチフェーズDC-DCコンバーターは、エレクトロニクスにおける平衡原則の良い例です。つまり、恩恵を得るには、それに釣り合う何らかの不利益の対価を支払う必要があります。処理能力向上のためのスイッチング速度の高速化の追及により、代表的マイクロプロセッサのコアの電圧は5Vから3.3Vへ、さらに1V以下へと低下し、他方ゲートの複雑さが増すにつれてますます高い電源電流が求められています。
とはいえ、低電圧かつ高電流の電源を作るのは容易ではありません。
マルチフェーズDC-DCコンバーターの需要が増加しているのは、部分的には出力フィルター部品の制限のためです。高い負荷電流で出力リップルを必要なレベルまで下げるためにフィルターの値を任意に大きくすることは、技術的理由と経済的理由の両方により不可能です。
さらに、ますます小さなフォームファクタが要求されるので、出力のインダクターとコンデンサーを物理的にそれほど大きくできません。そのため、新しいテクノロジーが必要です。マルチフェーズテクノロジーの長所を示すため、まずシングルフェーズの形式を先に示します。
反復する充放電サイクルの間、出力電圧はリップルVRIPPLEのピーク-ピークの大きさだけ変化します。負荷電流が増加すると、放電電流が増加し、充電電流が自動的に増加します。つまり、FET、インダクタンスLおよびコンデンサーCを通って電流が増加します。VRIPPLEを小さく保つには、スイッチング周波数とLおよびCの値を増やす必要があります。
しかし、効率を高く保つには、FET、インダクターおよびコンデンサーの直列抵抗値を低くしなければばらないので部品サイズが大きくなり、またEMCが懸念されるので最大周波数が制限されます。
マルチフェーズコンバーターは、いくつかの部品の間で負荷電流を分担することにより、この難題を解決します。2フェーズ構成の原理を図7に示します。
マルチフェーズ出力の短所の1つは、追加されるフェーズ毎に2個の追加FETと1個のインダクターが必要になるため、部品コストが高くなることです。また、フェーズをずらした複数の出力を発生するように制御ICを設計する必要があります。
しかし、前に述べたように、インダクタンス値を小さくすることができるので、デザインがはるかに小さくなります。コンデンサーの値も小さくすることができます。位相をずらして個々の出力をオンすれば、結合された出力電圧の最大振幅が減少し、電流がもっと均一になり、従ってEMIが減少します。
つまり、入口でのフィルタリングの量も小さくすることができます。さらに、出力コンデンサーを小さくすることができるので、負荷の変化に対する応答時間が加速され、セトリング時間が短縮されます。
2フェーズ出力は一般に180度ずらします。3フェーズ出力は120度にします。ただし、4フェーズ出力は通常逆位相で動作する2組のペアに構成します。その理由は、回路を流れる位相のずれた反射入力電流が多すぎない方が、パルス入力のEMCフィルタリングの設計が簡単だからです。
降圧、昇圧またはSEPICの構成にすることができ、短絡保護および入力の低電圧ロックアウト回路を内蔵した、組み合わせて使えるマルチフェーズコントローラーICが市販されています。
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※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
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