DC-DCコンバーターのレギュレーション:DC-DCコンバーター活用講座(9) 電力安定化(9)(4/4 ページ)
今回の記事では、DC-DCコンバーターのレギュレーションとリモートセンスについて解説します。
センス帰還による新たな電力損失
この連載で既に述べたように、DC-DCコンバーターのメーカーは、効率をできるだけ100%に近付けることを目標に、その値をできるだけ上げるために大変な努力を払ってきました。DC-DCコンバーターがI2R損失を補正できるということは、システム開発者が出力接続の抵抗に注意を払う必要がなくなったことを意味します。しかし、このシステムは、苦労して実現した高い効率を損なってしまうような新しい電力損失を発生させます。出力接続の電圧降下によって生じるこの新たな電力損失は、式2を使って計算できます。
この式の結果は、RP60-4805Sを使用して説明することができます。VS+とVS−は、それぞれ出力ピンVOUT+とVOUT−(ピン位置で直接測定)の差、および負荷端子で測定したVL+とVL−の電圧差を表わします。このコンバーターは、5Vの出力電圧で最大12Aを出力します(60W)。長さ10cm、幅10mm、平均厚70ミクロンの銅製PCB配線を介して負荷が接続されている場合、各配線のバルク抵抗は2.5mΩで、合計接続抵抗は5mΩになります。この場合の電力損失PVDは次式で得られます。
この新たな電力損失は全体的な効率に影響を与えます。RP60の変換効率は90%で、これは全負荷時の内部損失が6Wであることを意味します。よって、追加的なPVD損失が0.72Wあるということは、全体的なシステム損失が新たに8.3%増加することを意味します。
このジレンマを解消する方法が、負荷点(POL)の概念です。POLはI2R損失を最小限に抑えるための方法です。この方法では、リードを短くして損失を小さくするために、DC-DCコンバーターは負荷にできるだけ近い場所に置かれます。よってコンバーターは、中心的な位置に設置して全ての負荷に電源を供給するのではなく、1つの負荷に1つずつ、複数個使われます。
⇒「DC-DCコンバーター活用講座」連載バックナンバーはこちら
(次の記事を読む)
※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 電圧リファレンスICを正しく選ぶ
電圧リファレンスICは、安定した固定電圧を必要とする電子回路を設計する上で必須のデバイスである。本稿では、まず、電圧リファレンスICの基本的な構成について概説する。その上で、ネオン放電管から最新のICに至るまで、電圧リファレンスに用いられる電子部品/ICの歴史をまとめる。さらに、電圧リファレンスICを選択するにあたって考慮すべき各種仕様について説明する。 - 電流モード制御DC-DCコンバータの特性改善
電流モード制御のDC-DCコンバータは、どの位置で電流検出を行うかによって特性が大きく左右される。本稿では、従来の設計の問題点を指摘するとともに、DC-DCコンバータの種類ごとに電流検出の最適な位置について解説する。 - レギュレータの出力電圧降下
- ディスクリート構成の高輝度LED駆動回路
- AC-DC電源の設計ポイント
スイッチング方式のAC-DC電源は、旧来型のリニア方式では得られない高い効率を実現するものとして急速に普及した。しかし、スイッチング方式は、従来は存在しなかった新たな課題ももたらした。結果として、AC-DC電源の設計は、従来よりもはるかに複雑なものとなった。では、その課題とはどのようなもので、それを解決するためには、どのような工夫を盛り込む必要があるのだろうか。 - 2系統の信号で制御可能なHブリッジ回路