バックライトの修理――CCFLの入手困難も知恵で立ち向かう:Wired, Weird(2/2 ページ)
今回は、バックライトが点灯しなくなったタッチパネル付き液晶ディスプレイの修理の様子を紹介する。冷陰極蛍光管(CCFL)を取り換えれば、修理できる内容だったのだが、同じCCFLが手に入らず、知恵を使うことにした――。
CCFLを取り換えればよいのだが……
同じ長さのCCFLをインターネットで検索したが、この長さのCCFLは見つからなかった。バックライトのLED化が進み、小型のCCFLを作る会社が少なくなっているようだ。蛍光灯やPC用の長いCCFLは入手できるが、この小型タッチパネルには長すぎる。結局140mmのバックライト用CCFLは入手できなかった。
しかし、少し短いがパーツショップで販売されている長さが90mm程度の陰極管が見つかった。これを使うとパネルの周辺部の明るさが気になるが、中央部分を重ねて使用すれば表示が見えるようになるだろう。動作確認のため90mmのCCFLを手配した。図5に示す。
図5の上側が実装されていたCCFLで約140mm、下が手配した91mmの細いCCFLだ。長さが50mm違うので2本使用しても明るさにむらが出るのは明白だ。修理の依頼先に明るさのむらが出ること報告したら「現状は真っ暗で見えないので、明るさに多少のむらがあっても問題ない」という返事をもらった。これなら気楽に修理できる。
まずは50mmの長さの配線でCCFLを延長して、黒いゴムを取り付け本体に実装してみた。本体に押し込んでいる時に『ポキッ』と嫌な音がした。取り出してみたら、細いCCFLが途中で折れていた。図6に示す。折れた部分を赤四角で囲った。
黒ゴムにCCFLを取り付けて本体へ挿入したので、挿入時にCCFLにストレスがかかって割れてしまったと思われる。そこで、割れを防ぐためにCCFLと配線を150mmの長さの透明のヒシチューブ(熱収縮性チューブ)で全面カバーし、黒ゴムは使用せずにバックライトのケースに取り付けた。図7に示す。
ケースへ挿入時の引っかかりはなく、スムーズに取り付けることができた。CCFLへのストレスを少なくしたのでCCFLが少し浮いた取り付けになった。電源を投入しパネルの明るさを確認した。図8に示す。
DC24V電源を投入したらバックライトが点灯した。明るい光でもパネルの文字は読める。消費電流は220mAで、修理前よりも60mA程度増え、ライト点灯で約1.2Wの電力アップになった。しかし予想通りではあるが、パネル上側の左右の隅が少し暗い……。とは言え、何とか使えそうなレベルの明るさにはなったので、顧客に納品して確認してもらうことにした。数日後、無事に顧客から「OK」の返事をもらった。
この修理方法ではCCFLが固定されず少し浮いているので、振動の多いところで使用する場合は振動防止が必要かもしれない。ただCCFLは、割れ防止と絶縁も配慮して、透明のヒシチューブに入れたので簡単に割れることはないだろう。今回のバックライトの修理方法は他のメーカーのタッチパネルや暗くなった液晶パネルにも応用できそうだ。
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