アナログ基板の中にノイズ源 ―― 温度表示基板の修理:Wired, Weird(3/3 ページ)
今回は、温度表示がズレてしまうという温度調節器に使われている温度表示基板を修理する。どうも温度表示基板自体には不具合はなく、ノイズの影響で誤表示を起こしているようなので、ノイズ対策を施していこう。
本格的に対策を行う
次に、リレー出力部の拡大写真を図4に示す(この写真の左下の黒い部品はノイズ対策を行った後の写真だ)
3個の可変抵抗と3個のオペアンプ(LM324)の左側に、赤と黒の2端子の部品があり、この背面にリレーが実装されている。このリレーの接点は左上の2個のタブ端子に接続され、AC200Vの電源をオンオフしている。赤の2端子の部品は接点に並列に接続されているので、サージ吸収用のバリスタと思われる。表面に「275 20φ」と印刷されている。シルクの275は27kVの意味だが、バリスタ電圧がよく分からない。赤色のバリスタの基板面が少し白っぽくなっている。部品が劣化している可能性があるので、黒色の470Vのバリスタを追加してみた。
さらに部品面に470Vのバリスタ、ハンダ面に3個のセラミックコンデンサーによるノイズ対策を追加した。そして、温調器を連続稼働してもらい動作確認を行ったところ、不具合現象は発生しなかった。なんとか温調器の出荷にこぎ着け、出荷後のエンドユーザーの現場でも正常に連続稼働しているということだった。もう大丈夫なようだ。
不具合原因とノイズ対策をまとめる
温調器の温度表示の不具合原因と対策をまとめてみよう。温調器が誤動作するノイズ源は、AC200Vの電圧をリレー接点でトランスへ供給していることに起因していた。AC200Vのピークの電圧は480Vになるが、AC電圧のピーク時にリレー接点がオフすると1000Vを超えるサージ電圧が発生する。基板に実装されていた赤色のバリスタは、長期間サージ電圧を受け続けたことで劣化し、サージを吸収する能力が低下していた可能性が高い。
発生したサージ電圧がノイズ源となって、PT100の配線やPT100のGND側の配線および、TC7107のアナログ電源にノイズが乗ってオペアンプやTC7107がラッチアップした可能性が高い。ノイズへの耐久性を上げるために3個のセラミックコンデンサー(容量1μF)を追加した。追加場所はPT100のセンサー端子、PT100とGND接続の端子、TC7107のアナログ電源の3カ所だ。
ノイズの発生を少なくする方法はACポンプの駆動をリレー接点ではなくゼロクロス回路のソリッドステートリレー(SSR)を使えばよい。これならポンプ電源をオンオフするタイミングがAC電源の0V付近になり、サージの発生が小さくなるので、ICが誤動作することはなくなるだろう。
今回の温調器の不具合は温度制御基板のアナログ回路の中にノイズ源があることが原因だった。リレー接点でAC200Vのトランスの入力電圧をオンオフしており、トランスから逆起電力が発生し大きなノイズをまき散らしていた。リレーの接点でAC電源をオンオフしており、このリレーの使い方はかなりまずかったと言えるだろう。
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