可動線輪型メーターとMOSFETで低電流を測定:Design Ideas 計測とテスト
今回は、可動線輪型メーターとMOSFETを用いて低電流を測定する回路を紹介する。
nチャンネルMOSFETで電流測定のフレキシビリティを高める
EDN Japan記事「可動線輪型メーターで低レベルの電流を測定する」では、可動線輪型アナログメーターを使って、1A未満の低電流を測定する方法を紹介している。その回路は、メーターのムーブメント感度と測定範囲の選択幅を大きく広げるもので、シャント抵抗の選択を簡素化できる。
同回路ではメータードライバとしてバイポーラトランジスタを使用しているが、場合によっては、MOSFETの方が適していることもある。同回路は、電圧コントローラーの電流シンクで構成されており、バイポーラトランジスタのエミッタ電流を測定する。アナログメーターを駆動しているのはトランジスタのコレクタ電流であるが、バイポーラトランジスタのエミッタ電流IEとコレクタ電流ICとは同一ではない。エミッタ電流には、ベース電流IBが加わるからである。
これらの電流成分はIE=IC+IB、つまりIC=IE−IBと表すことができる。ベース電流が測定精度に悪影響を及ぼすか否かは、IBの大きさによって決まる。さらに、ベース電流はIB=IC/βなので、コモンエミッタ利得βに依存する。βが100よりも大きいと、一般にベース電流のエミッタ電流への寄与は無視できる。しかし、βはこれより小さいこともよくある。
例えば、汎用のnpnシリコントランジスタ「BC182」では、小電流時のβが室温でわずか40と小さい。このトランジスタのコレクタに15mAフルスケールのメーターを用いるのであれば、最小βにおけるフルスケールベース電流IBは0.375mAになる。コレクタ電流からベース電流を引くと、2.5%もの誤差が発生する。
しかし、フルスケールの振れに150μAを要する可動線輪型メーターを用いるとすると、βがコレクタ電流につれて低下するので、測定誤差は大幅に増える。BC182では、コレクタ電流を数mAから200μAに減らすと、βが0.6倍に減少し、メーター読取精度に悪影響を及ぼす。この問題を解決して測定精度を改善するには、BC182を、「BSN254」のような、nチャンネルMOSFETに置き換えればよい(図1)。
MOSFETはゲート電流を引き込むことがないので、そのドレイン電流IDはソース電流ISに等しい。このMOSFETの選定では、ゲート―ソーススレッショルド電圧ができるだけ小さなものにする。例えば、BSN254では、室温でのゲート―ソーススレッショルド電圧は0.8V〜2Vである。その他の回路の設計は前述の記事の通り、R1の最大電圧降下1Vに対して、RSENSE2を次のように計算する。
ここで、RSENSEの単位はΩ、1VはR1による電圧降下を表し、IMETERはメーターのフルスケールの読み(単位A)である。
1kΩの抵抗R1が、センス抵抗RSENSE1の両端に1V/1Aの出力を生ずることに注意されたい。このアプリケーションでは、100mAでRSENSE1の両端に0.1Vを生じ、R1にかかる電圧はメーターのフルスケールの振れ1Vに対応する。
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※本記事は、2008年7月29日にEDN Japan臨時増刊として発刊した「珠玉の電気回路200選」に掲載されたものです。著者の所属や社名、部品の品番などは掲載当時の情報ですので、あらかじめご了承ください。
「珠玉の電気回路200選」:EDN Japanの回路アイデア寄稿コラム「Design Ideas」を1冊にまとめたもの。2001〜2008年に掲載された記事から200本を厳選し、5つのカテゴリーに分けて収録した。
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