反相回路を持つ減圧機器の修理(後編) 逆相検知の仕組みを理解する:Wired, Weird(3/3 ページ)
減圧機器のコントローラー修理の続きを紹介する。前回は、詳細に調べなかったリレー基板を調べると、よく分からない回路が出現したので、調べて見ることにした――。
不良原因を探る
さて、コントローラーの修理に戻ろう。コントローラーのリレー基板に実装されていたコンデンサーを確認した。図4に示す。
図4は反相検知回路に実装されたコンデンサーの写真だ。コンデンサーの表示値は0.068μF(68nF)で反相リレーのコンデンサーの値と同じだった。しかし、コンデンサーを取り外して単体で容量を測定したら45nFしかなかった。プラスティックコンデンサーは固体コンデンサーなので容量は低下しないと思い込んでしまったのが、大きな間違いだった。
コンデンサーの容量が減ったことで正相の接続を認識できずリレーが動作しなかったので三相電源の接続不良と判定されたようだ。プラスティックコンデンサーの容量低下がコントローラーの動作不良の原因であることが分かった。さっそく代替品のコンデンサーを手配して交換した。図5に示す。
図5の右下の茶色の部品が交換したコンデンサーだ。リレー基板をコントローラーへ取り付け、AC電源を通電してシーケンサーの動作が正常であることを確認し、顧客へ動作確認を依頼した。
数日後に依頼主から『正常に動作している』との返事があった。やはり図4のプラスティックコンデンサーの容量低下が動作不良の原因だった。修理は無事に終えたが、使用されていたコンデンサーの耐圧は275Vacであり、AC200〜240V電源で使うには少し耐圧不足ではないかという、気掛かりだけは残ったが……。
今回の修理を振り返る
三相モーターを使用した減圧機器ではモーターの正回転で負圧を作るが、逆接続すると逆回転し陽圧になってしまうのでポンプや関連部品が破損してしまう。そのため電源投入時に三相電源の接続順が正しいことを確認し、正しく接続されていない時はインターロックをかけて動作を停止させ、機器の破損を防止していた。
なお今回修理した減圧機器のコントローラーは10年以上も連続動作していたようで、機器の連続運転中にコンデンサーの容量が低下しても反相リレーは動作を保持したままだったので、アラームが出なかったようだ。
この修理後にも三相電源の接続を監視する回路を持った機器を4機種ほど修理したが、反相回路の定数は同じだった。また、コンデンサーの容量低下による動作不良は他の装置でも見つかった。なお最近の減圧機器はインバーターでモーターを回転させているので三相電源の接続の監視はなくなっていると思われる。
今回の修理では劣化するはずがないと思っていたプラスティックフィルムコンデンサーの容量低下が見つかった。三相電源の接続の監視回路の落とし穴がよく見えた。
《次の記事を読む》
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
反相回路を持つ減圧機器の修理(前編) 難航する不良箇所の特定
今回は三相電源の接続を監視する反相回路を持ったコントローラーの修理について報告する。アナログ基板の中にノイズ源 ―― 温度表示基板の修理
今回は、温度表示がズレてしまうという温度調節器に使われている温度表示基板を修理する。どうも温度表示基板自体には不具合はなく、ノイズの影響で誤表示を起こしているようなので、ノイズ対策を施していこう。バックライトの修理――CCFLの入手困難も知恵で立ち向かう
今回は、バックライトが点灯しなくなったタッチパネル付き液晶ディスプレイの修理の様子を紹介する。冷陰極蛍光管(CCFL)を取り換えれば、修理できる内容だったのだが、同じCCFLが手に入らず、知恵を使うことにした――。制御用PCの修理(前編) CPU横の膨れたコンデンサー
半導体製造装置に使用されている制御用PCの修理が舞い込んだ。「電源が入らない」という症状だったので電源の不良を疑ったが、CPU基板に故障原因があった……。今回から2回にわたり、制御用PCの修理の様子を報告しよう。悲鳴を上げて壊れたプリンタを修理【分解編】
長年、愛用してきた多機能プリンタが先日、「キャー」という悲鳴のような音を出して、動かなくなってしまった。代替品が届くまでの間をしのごうと、修理に挑戦してみた。なんだこの設計は! メーカーの資質を疑う醜い回路設計
筆者は常々、良い品質の製品を作ることは、メーカーが生き残るための必要条件だと確信している。そうした中で、先日、修理依頼を受けた温調器は、目を覆うばかりの醜い設計が……。今回は、メーカーの資質が疑われるほどの悪設計だった温調器の修理の様子を紹介しよう。