代替部品が見つからない減圧ポンプコントローラの修理 (スイッチ編):Wired, Weird(3/3 ページ)
今回は、代替品がないスイッチの交換方法と2台目の修理経過を報告する。
ひどく腐食していたスイッチ内部
この修理品は、多くのスイッチが壊れており、倉庫での保管中にスイッチの動作不良を起こす腐食が進行していたと思われたので、スイッチを分解して内部を詳細に確認することにした。図4にスイッチの内部の様子を示す。
予想通りスイッチの銅板に緑錆が発生し、なおかつスイッチの内部が濡れていた。これはひどすぎる。保管条件が劣悪で他のスイッチも劣化が進んでいるだろう。この写真を顧客へ送って、正常に動作しているスイッチも交換するように顧客に提案したところ、「交換してほしい」の返事があった。
操作パネルの5個のスイッチを全て交換しインターロックのセンサーを仮接続して、AC200Vを通電した。電源表示が点灯しアラーム表示はなくなった。パネル基板は本体から分離して各スイッチの操作を行った。各スイッチのランプが点灯し正常に動作した。『これで修理は完了だろう』と思って、パネル基板を機器に取り付けて、顧客へ納品した。
動作しない ―― 想定外の返答
翌日顧客から電話があり『電源を入れてスイッチを操作しても動作しない』という連絡だった。パネルのアラーム表示を確認依頼したら、アラームの表示は何も出ていなかった。『パネルを操作して確認したときは、正常に動作したのになぜだろう?』と首をかしげながら、修理品を返送してもらった。
返却された機器のインターロックを仮接続し、AC200Vを通電してスイッチ操作したが、確かにスイッチを押しても何も動作しない。電源を切り、パネル基板を機器から取り出し、再通電して単体で確認したらスイッチの操作で機器が動作した。パネル基板を機器に取り付けても動作しなかった。なぜ、このような動作不良になるだろう!?
ノイズの影響が受けていそうだと思い、パネル基板とケースの距離を広げてみることにした。
2mm厚のプラスティックスペーサーを入れて、パネル基板を取り付けて操作すると動作した。しかし、操作パネルとスイッチの間にも隙間があるので、スイッチをかなり強く押さないと操作ができない。やむを得ず操作スイッチの上にも厚さ2mmの透明スペーサーを貼り付けた。写真を図5に示す。
スペーサーの追加でスイッチの操作が可能になり、パネル基板を機器本体に取り付けても動作できるようになった。これ以上、修理するすべがないので納品してみると、顧客から「無事、動作できるようになった」と連絡があった。これで一連の修理は完了だ。
残る疑問
しかし、なぜパネル基板を機器に取り付けることで動作しなくなったのか? なぜ2mmのスペーサーを入れることで動作するようになったのだろう?
5V電源の改造に使ったDCDCコンバーターが非絶縁タイプだったので、ノイズを拾いやすい構造になった可能性が高い。電源のGNDとケースのFGが接触してスイッチの回路に大きなノイズが乗っている可能性もある。
CPU基板の回路図があれば本当の原因を明確にできるかもしれないが、回路図がない現状では対処療法しか実施できない。この機器の動作不良は今後も多発しそうだ。
《次の記事を読む》
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 代替部品が見つからない減圧ポンプコントローラの修理 (電源編)
半導体デバイスの製造に使用される減圧ポンプコントローラの修理依頼があった。不具合内容は『スイッチ操作でモーターが動作しない』という内容だった。電源が関係した不具合と想定され、機器の取扱説明書も添えられていたので修理を引き受けることにした。というわけで今回は、この減圧ポンプコントローラの修理を報告する。 - マルチメーターの落とし穴
マルチメーターの赤と黒の端子はどちらがプラスの電位になっているのだろうか。測定時にかかる電圧はどの程度なのだろうか。意外なことに、機器ごとにばらばらだ。そのため、測定対象の部品の劣化を招くこともある。 - スイッチング電源の焼損
スイッチング電源は、変換効率の高さから従来のシリーズ電源を置き換えた画期的な電源だ。だが、登場した当初は安全性に課題が残る製品も多かった。例えば、焼損である。どうやってこの問題を解決したのだろうか。 - なぜこんな仕様に? 不便な保護回路付きリチウム電池ホルダーを改造
今回は、少し取り扱いに注意がいる「18650リチウムイオン二次電池」にうってつけと思い購入した保護回路付き電池ホルダーを取り上げる。便利な電池ホルダーだと思って手に入れたものの、不便極まりない仕様になっていた――。そこで、不便さを解消すべく、保護回路をじっくり観察し、改造を施すことにした。 - なんだこの設計は! メーカーの資質を疑う醜い回路設計
筆者は常々、良い品質の製品を作ることは、メーカーが生き残るための必要条件だと確信している。そうした中で、先日、修理依頼を受けた温調器は、目を覆うばかりの醜い設計が……。今回は、メーカーの資質が疑われるほどの悪設計だった温調器の修理の様子を紹介しよう。 - フィードバックがない“暴走電源”
かなり特殊な電源の修理依頼があった。ランプ用の電源だが設計/製造した電源メーカーが設備業界から撤退してしまい、電源の修理を依頼できなくなったということだった。現物を確認したら……『ブレーキがない自動車』のような危ない“暴走電源”だった。今回はこの“暴走電源”の修理例を報告する。