突然タンタルコンが燃えた ―― バッテリーを逆接した基板の修理(1):Wired, Weird(3/3 ページ)
今回はバッテリーが逆接続された基板の修理について報告する。電源を逆接続したら基板に搭載された部品にどのような現象が起こり、どのように部品が壊れるかを検証するのによい機会になった。
タンタル電解コンデンサーが燃えている!
SBDとパワーMOSFETを外してそれぞれをテスターで確認したが、2個とも正常だった。パワーMOSFETのゲートに4Vの電圧を印加したところ、オン抵抗は0.3Ωだった。正常な値なので基板へそのまま戻した。そしてバッテリー端子に12Vを印加してみたが、やはりPV(電源LED)は点灯しなかった。また基板上のIC2個の電源端子に電圧は印加されなかった。モーターのコントロールIC周辺の写真を図4に示す。
モーターコントロールIC「MC33035」のデータシートを確認したら電源端子が分かり、図4のICのすぐ上にあるタンタル電解コンデンサーC1がこのICのパスコンだった。またC1の直上にあるトランジスタ(赤四角でリードを囲う)のコレクタへは+12V電源が来ていた。定電圧電源を使って12Vで1Aの電流リミットを入れてPV端子へ接続し、トランジスタのコレクタとエミッタをジャンパーで接続してみた。すると、
あーっこれは何だ? わーっタンタル電解コンデンサーが燃えている!
突然、タンタルコンデンサーC1から煙が吹いた。結果から考えるとバッテリーの逆電圧が印加されたためタンタル電解コンデンサーが短絡破損していた。このため12V電源をタンタル電解コンデンサーで短絡して煙が噴出したわけだ。
この時、タンタル電解コンデンサーの故障モードを思い出した。タンタル電解コンデンサーは逆電圧でショートモードで破損するのでヒューズ付きを使うよう20年以上前に回路設計者へ教育したことが記憶によみがえってきた。バッテリーの逆接続でC1のタンタル電解コンデンサーにも逆電圧が印加されたので、短絡破損したようだ。このため、C1に電源を供給するトランジスタも破損し、電源がICに印加されていなかった。
トランジスタとパスコンを交換! でも……
トランジスタとパスコンを交換して電源を入れたが、なぜかPVが点灯しない。印加した電圧が低いのかなと思い、少しずつ電圧を上げたら13.2VでPVの緑LEDが点灯し、ICにも電源が供給された。この時の消費電流は50mA程度だった。しかし、CMOSを使った回路で負荷は接続していないのに50mAもの消費電流はどうも多すぎる。もちろんPUMPの端子には電圧は出なかった。
この基板が正常に動作するにはまだまだ時間がかかりそうだ。図3の回路メモで回路を詳しく読み解いていくと、パワーMOSFETがオンオフ動作を繰り返すことでDC/DCコンバーターと同じ原理でポンプの駆動に必要な電圧が生成され、徐々にPUMP電圧が上がっていくようだ。どうやら他にも多数の部品が壊れているようだ。続きは次回に報告する。
《次の記事を読む》
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 基板にダメージを与えず、簡単に表面実装部品を外す方法
修理を行う中で、表面実装部品(SMD)を基板から外さなければならない機会が増えたが、なかなか、うまくいかない。そこで、表面実装部品を基板にダメージを与えることなく、簡単に取り外す方法を模索してみた。今回は、筆者がたどり着いた表面実装部品を簡単に外す方法を紹介しよう。 - 電源修理のコツ ―― 発熱部品と空気の流れ
今回は、“電源修理のコツ”を紹介したい。電源は「電解コンデンサーを全て交換すれば、修理できる」という極端な話もあるが、効率よく確実に電源を修理するためのポイントを実例を挙げながら説明していこう。【訂正あり】 - 代替部品が見つからない減圧ポンプコントローラの修理 (電源編)
半導体デバイスの製造に使用される減圧ポンプコントローラの修理依頼があった。不具合内容は『スイッチ操作でモーターが動作しない』という内容だった。電源が関係した不具合と想定され、機器の取扱説明書も添えられていたので修理を引き受けることにした。というわけで今回は、この減圧ポンプコントローラの修理を報告する。 - 壊れていない基板の修理
今回は半導体製造装置に使用されている簡単なセンサーインタフェース基板の修理の報告だ。依頼された基板はI/Oのインタフェース基板で、実装されている部品は全て壊れていなかったのだが、動かないらしい。なぜだろうか……。 - アナログ基板の中にノイズ源 ―― 温度表示基板の修理
今回は、温度表示がズレてしまうという温度調節器に使われている温度表示基板を修理する。どうも温度表示基板自体には不具合はなく、ノイズの影響で誤表示を起こしているようなので、ノイズ対策を施していこう。 - オンラインで電源修理の支援をやってみた
アナログ電子回路技術者向け掲示板サイトに書き込まれた電源修理に関する相談。書き込み主は、修理せざるを得ない切羽詰まった様子だったので、オンラインサイト越しに電源修理を支援してみた。無事に修理できたようだが、危険と隣り合わせであることも学んだ。