アルミ電解コンデンサー(1)―― 原理と構造:中堅技術者に贈る電子部品“徹底”活用講座(34)(2/2 ページ)
今回から、湿式のアルミ電解コンデンサーを取り上げます。古くから、広く使用される“アルミ電解コン”ですが、さまざまな誤解、ウワサ話があるようです。そこで、誤解やウワサに触れつつ、アルミ電解コンの原理や構造、種類などを説明していきます。
アルミ電解コンデンサーの構造
アルミ電解コンデンサーの概略は図3、詳しくは図8に示すような構造をしています。基板自立型(φ22〜35)のものやリードタイプ(φ4〜22)、表面実装型のものでも基本的な材料に変わりはありません。
図8からアルミ電解コンデンサーの主な構成部材は次の
・陽極箔、陰極箔と呼ばれる電極箔
・電解液
・電解紙(絶縁紙)
・封口ゴム
・アルミ缶ケース
・リード、外装スリーブ、など であることが分かります。
アルミ電解コンデンサーはこれらの構成部材を使用して次のような工程で作られます。
表2に示すように、アルミ箔はエッチングによって表面積を拡大しているので直接酸化膜に機械的接触をすることはできなくなり、その代わりに微細な孔に侵入できる導電性の電解液を用いています。
この電解液は陽極箔表面の酸化アルミニウム表面に接触して電荷の移動の電路となりますので、誘電体に接触する実際の陰極は電解液ということになります。
電解紙はこの電解液を保持する機能を受け持ちます。
ただし、電解液中に引き出し用リード端子を刺しただけでは集電インピーダンスが下がりませんから表面積の広いアルミ箔を用いて広い面積で電解液からの電荷を受け取り外部へ排出することになります。これが物理的な陰極箔の役目になります。
アルミ電解コンデンサーの誤解
アルミ電解コンデンサーはその記号や内部構造から2枚のアルミ箔の間に保持された電解液が誘電体となって機能しているとした情報をよくインターネット上で見かけますが実態はここまで説明してきたように、
+極 → 陽極箔中の純アルミ部分
誘電体 → 酸化アルミニウム
ー極 → 電解液+陰極アルミ
となっていることが理解いただけたかと思います(図9)。
次回はもう少し詳しくこれらのアルミ箔について説明したいと思います。
執筆者プロフィール
加藤 博二(かとう ひろじ)
1951年生まれ。1972年に松下電器産業(現パナソニック)に入社し、電子部品の市場品質担当を経た後、電源装置の開発・設計業務を担当。1979年からSPICEを独力で習得し、後日その経験を生かして、SPICE、有限要素法、熱流体解析ツールなどの数値解析ツールを活用した電源装置の設計手法の開発・導入に従事した。現在は、CAEコンサルタントSifoenのプロジェクト代表として、NPO法人「CAE懇話会」の解析塾のSPICEコースを担当するとともに、Webサイト「Sifoen」において、在職中の経験を基に、電子部品の構造とその使用方法、SPICE用モデルのモデリング手法、電源装置の設計手法、熱設計入門、有限要素法のキーポイントなどを、“分かって設計する”シリーズとして公開している。
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