デジタルオシロスコープの歴史や種類:デジタルオシロスコープの基礎知識(1)(5/5 ページ)
電子回路技術者にとって日々使う道具である「オシロスコープ」。原型は19世紀末に登場しており、その後のエレクトロニクス技術の進化によって高性能化や高機能化が進んだ。現在では、単なる現象の変化を波形として目視で観測するための測定器から、取り込んだ波形データを加工してさまざまな測定値を得ることができる複合測定器となってきている。今回の連載では、オシロスコープとプローブについて歴史、製品の種類、機種選定のポイント、製品の内部構造、製品仕様、トリガ機能、演算機能、プローブ、校正についての基礎知識を紹介していく。
オシロスコープの選定ポイント
市場では、多くのメーカーからさまざまなオシロスコープが販売されている。その中から自分にあったオシロスコープを選ぶポイントについて解説する。
使い慣れていること
オシロスコープはエンジニアが毎日使う道具であるため、今まで使っていた製品やメーカーのものが操作に迷うことなく使える。特に、最近のオシロスコープは高度な機能が多いため、新しい製品で目的の機能を使いこなすまでに時間が必要となっている。
また、オシロスコープとプローブを接続するインタフェースは、一般にBNCコネクターではあるが、使い勝手をよくするために各社それぞれの固有のインタフェースを持っている。インタフェースの変換コネクターは販売されているので、便利な機能の利用は限定される可能性はあるが、オシロスコープへの信号接続は可能である。
同じ測定器メーカーでも複数のインタフェースを持つため、すでに保有しているプローブの接続が容易なオシロスコープを選ぶのがよい。下記には、テクトロニクス社が採用しているオシロスコープ-プローブ間のインタフェースの種類を示す。
測定したい信号のアナログ特性の把握
観測した波形の特性を事前に知っておく必要がある。一般には、下記の特性である。
- 同時に観測したい信号の数
- 観測に必要な周波数帯域
- 信号の振幅値の範囲
- 連続信号か、単発もしくは発生頻度の少ない突発的な現象か
- 信号のセンシング、電圧以外はセンサーが必要
- 信号源のインピーダンス
- 信号に重畳するノイズの性質
トリガー源の選定
波形観測の基点となるトリガー源を決める。トリガー源は安定した信号でないと信頼できる波形観測ができないので、トリガー源となる信号の特性を事前に知ることが必要となる。
また、オシロスコープが持つトリガー機能を使って安定したトリガーが得られることを確認する必要がある。
単発信号観測では観測時間と周波数帯域を決める
デジタルオシロスコープでは、サンプリング周波数によって観測できる信号の周波数帯域が決まっている。観測時間が長いとオシロスコープに搭載された波形メモリに必要な現象を取り込むことができないので、サンプリング周波数を下げて全ての現象を取り込むことになる。ただし、サンプリング周波数を下げると、観測できる最大周波数は低下する。
このため、オシロスコープに搭載されている波形メモリが必要な容量であるか確認する必要がある。
波形演算処理を決める
オシロスコープで取り込んだ波形を演算処理して観測したい場合は、演算内容を決めておく必要がある。ただし、多くのオシロスコープの分解能は8ビットであるため、演算精度がどの程度得られるかを考慮する必要がある。
期待する演算精度が得られるオシロスコープのA/D変換器の分解能を持っているかを確認する必要がある。
利用環境の確認
オシロスコープはさまざまな環境で利用されるため、使われる環境にあったオシロスコープを選ぶ必要がある。
電池駆動でオシロスコープを利用する場合は、電池で動かせる時間を事前に確認して、必要であれば予備電池を準備することが必要である。
測定器メーカーのサポート
オシロスコープを利用する際には、使い方が分からないときの測定器メーカー支援が必要となるため、問合せ窓口を持った測定器メーカーを選ぶのがよい。また修理や校正への対応が迅速にできることも重要である。
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