負の出力電圧を動的に調整する「ミッシングリンク」:電源設計のヒント(3/3 ページ)
負の出力電圧を生成する標準的な手法はいくつかあり、一方で出力電圧を動的に調整するよく知られた手法もあります。この技術記事では、シンプルなレベルシフト回路を使ってこの2つの手法をつなぎ合わせる「ミッシングリンク」について紹介します。
実際のシミュレーション結果から見てみる
図5は、降圧コンバーターを反転昇降圧コンバーターとして運用した場合に、この方法による負出力電圧の調整能力を示すシミュレーション結果です。
スタートして最初の6ミリ秒の間、負出力電圧(赤で示す「NVOUT」と書かれた部分)は−7Vまで緩やかに下がります。VADJを示す青い線は、スタートアップの間は負出力電圧に追従します。7ミリ秒の時点でPWM回路が有効化され(PWMの入力波形を紫で示す)、レベルシフトしたPWM(VPWM)を生成します。するとVADJ(青い線)が上昇し、それに反応してコンバーターの出力電圧が上昇します。約2ミリ秒の移行時間の後、コンバーターの状態は新たに定常状態動作ポイント(−2V付近)に達します。このシミュレーションの後の方では、PWM信号を調整することで出力電圧が下がり、滑らかで効果的な結果が得られます。
シンプルな回路を使用して負出力電圧を調整できるようにする方法では、多くの市販の降圧コンバーターICを扱うことができます。この回路は、出力電圧を調整する一般的な手法と、レベルシフト信号を組み合わせています。ここで取り上げたレベルシフト回路により、システムグランドを基準とするPWMソースで、電力コンバーターのFBノードへ流れる電流を調整できるようになります。設計上の主な課題は、(負出力電圧と同じ電位の)ローカルICグランド電圧が変化する間の流入電流の制御です。普通の降圧コンバーターを反転昇降圧コンバーターとして動かす今回の手法は、負出力電圧の動的調整が必要なさまざまなアプリケーションに適しています。
参考資料:
・アプリケーション・レポート(英語):
[1]“Using the TPS5430 as an Inverting Buck-Boost Converter.”
[2]“Create an Inverting Power Supply From a Step-Down Regulator.”
[3]“How to Dynamically Adjust Power Module Output Voltage.”
・Analog Applications Journal(英語):
[4]“Using a buck converter in an inverting buck-boost topology.”
・Analog Design Journal(英語):
[5]“Methods of output-voltage adjustment for DC/DC converters.”
・レファレンス・デザイン:
[6]30-V to 150-V Adjustable Output Voltage Boost Reference Design for LIDAR Applications
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