交流インピーダンス測定の目的や原理:LCRメーターの基礎知識(1)(6/6 ページ)
日常生活ではあまり気付かないが、交流インピーダンス測定はさまざまなところで行われている。今回の解説記事では、主に数メガヘルツまでの低周波の交流インピーダンスを測るLCRメーターについて解説する。
自動平衡ブリッジ法
LCRメーターに採用されている方式であり、電子部品などのインピーダンス測定では広く使われている方式である。OPアンプの特性をうまく利用しており、発振器と電圧信号の大きさと位相差を測定できるベクトル電圧計によって構成されている。初期の製品はインピーダンスを求める演算をアナログ回路で行っていたが、現在では波形をA-D変換器によってデジタル化して演算を行う方法が一般的である。
【ミニ解説】ベクトル電圧計
LCRメーターを構成する要素としてベクトル電圧計がある。この回路はロックインアンプの技術が使われている。ロックインアンプは物理学の実験ではよく使われる測定器で、入力される微弱な信号に同期した信号を参照信号として入力し、ナノボルトオーダーの微弱な信号の振幅や位相を検出することができるものである。
ロックインアンプの内部は位相検波器とフィルター、アンプによって構成されている。ローノイズで大きなダイナミックレンジの信号を測定できるかが製品の価値を決めている。
LCRメーターにもロックインアンプと同じ原理の回路がベクトル電圧計として組み込まれている。
LCRメーターでは発振器の周波数を固定してインピーダンスを測定するが、高機能なインピーダンスアナライザでは発振周波数がスイープできるようになっているため、インピーダンスの周波数特性が画面にグラフィックで表示される。
実際のLCRメータでは信号源のHc、試料の端子間電圧を測定するためのHp、Lp、電流を吸い込むLcの4つの入出力端子がある。この4つの端子の配置と端子間の距離はメーカーが異なっても同じ場合もあり、そのときは異なるメーカーのテストフィクスチャを機械的に取り付けることができる。ただし、異なるメーカーのテストフィクスチャを利用する場合は特性が保証されないので注意が必要である。
LCRメーターはさまざまな用途で使われるため、製品分類すると下記のようになる。
電池駆動のハンドヘルドLCRメーターは、機器に組み込まれた電解コンデンサーの経年劣化による容量の減少を診断するなど現場での利用を想定している。また、電子部品生産向けのLCRメーターやCメーターは、高速にインピーダンスを測定して選別のための判定結果を電気信号として出力する機能を持っている。
高周波でのインピーダンスを測定する方法
100MHzを超える高い周波数のインピーダンスを測定する場合は、自動平衡ブリッジ法では難しくなるため、高帯域インピーダンスアナライザーではRF I-V法やネットワーク解析法が採用されている。
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