スペクトラムアナライザーの概要と種類:スペクトラムアナライザーの基礎知識(1)(5/5 ページ)
今回は、無線通信機などの高周波を取り扱う機器の開発、生産、保守の現場では必須の測定器、スペクトラムアナライザーについて解説を行う。
【コラム】スペクトラムアナライザーを理解するための用語
スペクトラムアナライザーの機種選定ではカタログや取扱説明書に書かれている用語を理解する必要がある。
- 周波数範囲
スペクトラムアナライザーの測定(設定)可能な周波数範囲。
- 周波数スパン
表示画面上で一度に掃引して観測できる周波数幅。
- 分解能帯域幅(RBW)
入力信号に含まれる周波数成分を分離するバンドパスフィルターであり、ピークから3dB低下点の帯域幅で規定される。最近では等価雑音帯域幅で規定される製品が多い。
- 平均雑音レベル
スペクトラムアナライザーの熱雑音により内部で発生する雑音レベルの平均値。
- ダイナミックレンジ
IECの用語の定義によればダイナミックレンジとはスペクトラムアナライザーにレベル差のある2つの信号を同時に加えたとき、規定された確度でそれらを測定できる振幅レベルの最大値になる。
ただしスペクトラムアナライザーの設定によってダイナミックレンジの値は異なること、また測定器メーカーによって定義が異なることもあるので注意が必要となる。
- 掃引時間(SWP)
表示画面の全てを移動する時間。
- ビデオ帯域幅(VBW)
検波回路以降の信号のノイズ成分を平均化させるためのローパスフィルターの帯域幅。
- 最大入力レベル
規定された設定条件でスペクトラムアナライザーの入力回路の破損が生じない最大許容レベル。
- アッテネーター
スペクトラムアナライザーがひずみの生じにくい最適な入力レベルで信号観測するためにある入力ミキサ回路前の減衰器。
- 検波モード
測定値をサンプルする時間の間にレベルが変化する信号を記録するときに信号のどのような状態とするかを決めるのが検波モードである。
検波モードにはNormal(ノーマル)、Pos Peak(ポジティブピーク)、Sample(サンプル)、Neg Peak(ネガティブピーク)がある。
- トレース保存モード
複数の掃引で得られた同じ周波数ポイントの測定結果を保存して表示するモード。
トレース保存モードにはNormal(ノーマル)、Max Hold(最大値)、Min Hold(最小値)、Lin Average(リニア平均)、Average(Log平均)がある。
- 側波帯雑音
ローカル発振器が持っている雑音。純度が高い信号を入力した際に、その信号の周波数の近傍で観測される位相雑音。
- 残留レスポンス
スペクトラムアナライザーに信号が入力されていない状態で特定の周波数帯に現れるノイズ。
転載元「TechEyesOnline」紹介
TechEyesOnlineは、測定器を中心にした製品情報や技術情報を提供する計測器専門の情報サイト。測定器の基礎・原理、測定セミナーから、市場動向・展示会・インタビュー記事までオリジナルコンテンツを豊富に掲載しています。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- FFTアナライザーの歴史と選定するための仕様の理解
信号の波形観測では、オシロスコープ、メモリレコーダー、記録計といった時間の経過に伴って信号強度の変化を観測する時間領域の測定器が多く使われる。しかし、信号に含まれる周波数成分を観測したいときは、周波数分析器が必要になる。今回は低周波信号の周波数成分を観測するFFTアナライザーについて解説を行う。 - 評価時間を短縮した光スペクトラムアナライザー
アンリツは、光アクティブデバイスの出力特性を評価する、ベンチトップ型光スペクトラムアナライザー「MS9740B」を発売した。従来機の機能や性能を継承しつつ、受光帯域幅の測定処理時間を2分の1以下にした。 - RF計測器3種を搭載のスペクトラムアナライザー
ローデ・シュワルツは、ベクトルネットワークアナライザーやトラッキングジェネレーターの機能を追加した新型スペクトラムアナライザー「R&S FPC1500」を発売した。 - 直流電子負荷とは ―― 概要と用途、動作モードについて
直流電子負荷装置の概要、利用するときの注意点、内部構造、利用事例などを分かりやすく解説する。 - さまざまな時間測定器やユニバーサルカウンターの測定項目
ユニバーサルカウンターについて解説する第1回。今回は、「カウンターが普及するまでに使われていた時間測定器」「カウンターが登場して以降の主な時間測定器」「ユニバーサルカウンターの主な測定項目」について説明する。 - デジタルオシロスコープの歴史や種類
電子回路技術者にとって日々使う道具である「オシロスコープ」。原型は19世紀末に登場しており、その後のエレクトロニクス技術の進化によって高性能化や高機能化が進んだ。現在では、単なる現象の変化を波形として目視で観測するための測定器から、取り込んだ波形データを加工してさまざまな測定値を得ることができる複合測定器となってきている。今回の連載では、オシロスコープとプローブについて歴史、製品の種類、機種選定のポイント、製品の内部構造、製品仕様、トリガ機能、演算機能、プローブ、校正についての基礎知識を紹介していく。