直流/交流電圧や抵抗の測定と仕様の見方:初めて使うデジタルマルチメーター(2)(4/8 ページ)
デジタルマルチメーターの基礎的な使い方について解説する本連載。今回は直流/交流電圧および抵抗の測定と仕様の見方について説明する。
交流電圧を測定するための結線
今回の解説で利用するデジタルマルチメーター34461Aは750Vrms、300kHzまでの交流電圧を真の実効値で測定できる。高い性能を持つため波形ひずみやノイズを含む商用交流電圧の測定、オーディオ信号測定器の交流電子電圧計(ミリバル)が対象とする広帯域の交流信号の電圧も測定できるようになっている。
交流電圧源とデジタルマルチメーターは下図に示すような配線を行う。
商用電源など感電の危険がある高電圧を測る場合は、デジタルマルチメーター本体およびテストリードセットの耐電圧を越えていないことを事前に確認する必要がある。また、安全のために測定対象への接続に使うクリップやグラバーは、容易に外れないようなものを選ぶ必要がある。
平均値検波と実効値検波の違い
デジタルマルチメーターで交流電圧を測定する仕組みは、交流電圧信号を直流電圧信号に変換してから高分解能A-D変換器を使って測定結果を得るようになっている。交流を直流に変換する回路方式には2つの種類がある。安価なハンドヘルド型マルチメーターでは、回路構成が単純な平均値検波回路が採用されている場合がある。しかし、最近のほとんどのデジタルマルチメーターは実効値検波回路が搭載されて真の実効値が得られるようになっている。
平均値検波回路と実効値検波回路では同じ交流信号を測定しても結果が異なるので、交流信号を測定する場合は使用するデジタルマルチメーターでどちらの検波方式が採用されているかを確認する必要がある。平均値検波回路で測定した交流電流はVmeanという単位で、実効値検波回路で測定した交流電圧はVrmsという単位で表現し、区別される場合がある。
交流電圧測定での周波数帯域
デジタルマルチメーターの交流電圧測定では、測定できる周波数範囲が製品によって異なる。上位機種のほうが高い周波数まで測定できる。測定可能な周波数範囲が異なるデジタルマルチメーターでは、交流波形に含まれる周波数成分の違いによって測定結果が異なる場合がある。
今回の記事で使った34461Aは、交流信号の測定周波数範囲を設定する機能がある。出荷時の設定は20Hz〜300kHzの中速フィルターとなっている。低速フィルターを設定すると測定できる周波数範囲は広くなるが、応答が遅くなり高速に測定はできなくなる。
デジタルマルチメーターの交流電圧測定の仕様表現
デジタルマルチメーターの交流電圧測定では、測定周波数ごとに測定確度が規定されている。周波数が10Hz〜20kHzの範囲の測定確度が高くなっている。
周波数 | 24時間 TCAL±1℃ |
90日間 TCAL±5℃ |
1年間 TCAL±5℃ |
2年間 TCAL±5℃ |
温度係数/℃ |
---|---|---|---|---|---|
3〜5Hz | 1.00+0.02 | 1.00+0.03 | 1.00+0.03 | 1.00+0.03 | 0.100+0.003 |
5〜10Hz | 0.35+0.02 | 0.35+0.03 | 0.35+0.03 | 0.35+0.03 | 0.035+0.003 |
10Hz〜20kHz | 0.04+0.02 | 0.05+0.03 | 0.06+0.03 | 0.07+0.03 | 0.005+0.003 |
20k〜50kHz | 0.10+0.04 | 0.11+0.05 | 0.12+0.05 | 0.13+0.05 | 0.011+0.005 |
50k〜100kHz | 0.55+0.08 | 0.60+0.08 | 0.60+0.08 | 0.60+0.08 | 0.060+0.008 |
100k〜300kHz | 4.00+0.50 | 4.00+0.50 | 4.00+0.50 | 4.00+0.50 | 0.200+0.020 |
注1)確度仕様の表現は±(読み値の%+レンジの%)となっている。 注2)仕様は、K=2のISO/IEC 17025(JIS Q17025)に準拠している。 注3)温度係数はTCAL±5℃から外れる場合、1℃外れるごとにこの値が追加される。 |
デジタルマルチメーターの交流電圧測定では、高電圧レンジでの最大入力電圧が「入力電圧と入力周波数の積」の上限が決められている。34461Aでは、750 ACVレンジが8×107V-Hzに制限されている。
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