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電磁気学入門(10)フライバックトランスの設計DC-DCコンバーター活用講座(53)(4/4 ページ)

電磁気学入門講座。今回は、フライバックトランスの設計について解説します。

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ギャップ長の計算

 必要なギャップ長(lg)は以下の式で計算できます。

<strong>式10:ギャップ長の計算(単位:mm)</strong>
式10:ギャップ長の計算(単位:mm)

 Aeffはギャップ脚の有効断面積で、ギャップのフリンジング磁束の影響を含む。有効断面積(Ae)は通常、コアの最も薄い部分の形状断面で、四角脚の場合は幅×深さで、円柱脚の場合はπr2。フリンジング磁束は、形状断面積の110〜125%になる有効断面積Aeffを与えるこの値に影響を及ぼす。

<strong>図5:エアギャップコアのフリンジング磁束により生じる有効断面積Aeff</strong>
図5:エアギャップコアのフリンジング磁束により生じる有効断面積Aeff[クリックで拡大]

 EP10コアの、中央円柱脚の径は3.45mmです。この事例は低電力コンバーターの設計なので、フリンジング磁束は特に重要ではないことから、形状断面積を第一近似とします。

 概略的な必要なギャップ長は以下になります。

銅損

 銅損はオームの法則(Ploss=I2RMSR)により計算できます。

 一次側および二次側に流れるRMS電流は、一次側がオンで二次側がオフの状態に流れる電流の平均です。

<strong>式11:実効電流の計算</strong>
式11:実効電流の計算

 使うことができる最大のワイヤ太さは、ボビンサイズとビルド高に依存します。図6はEP10コア用のボビンです。

<strong>図6:EP10ボビン寸法</strong>
図6:EP10ボビン寸法[クリックで拡大]

 巻き数は全部で28+28ターン必要で、導入および導出ワイヤも必要です。機能絶縁で十分なので、絶縁間隙は不要です。

 層あたり14巻きの4層巻きをボビン幅に収めるために、ワイヤ径は5.80/14=0.414mmである必要があります。ビルド高が4×0.406=1.62mmなので、AWG20のワイヤが適します。これは、絶縁用のテープ層をいくつか含んでも、問題なくボビンのビルド高2.08mmに収まります。

 AWG20ワイヤを使った14ターンは最適ですが、もうワンサイズ太いAWG18を使って銅損を減らすとすれば、層毎に最大11ターンなのでビルド高6×0.51=3.06mmで6層が必要になります。これではボビンのビルド高を超えてしますので、この選択はできません。

 外周寸法は16.23mmなので、この設計例ではAWG20ワイヤのDC抵抗は0.5mΩで巻き当たり14mΩ前後です。銅損は、I2Rから一次側が23mW、二次側が22mWになります。

 全銅損は45mWで、トランスを通る全電力の約1%なので満足な数値です。

実用的ヒント

 この設計例では、一次巻き線と二次巻き線のワイヤゲージと巻き数比はほぼ同じです。これは、単純なDC-DCコンバーターでは普通のことですが、一次側と二次側に異なるゲージを使うことに意味がある他のアプリケーションの多くはそうなりません。

⇒「DC-DCコンバーター活用講座」連載バックナンバーはこちら


執筆者プロフィール

Steve Roberts

Steve Roberts

英国生まれ。ロンドンのブルネル大学(現在はウエスト・ロンドン大学)で物理・電子工学の学士(理学)号を取得後、University College Hospitalに勤務。その後、科学博物館で12年間インタラクティブ部門担当主任として勤務する間に、University College Londonで修士(理学)号を取得。オーストリアに渡って、RECOMのテクニカル・サポート・チームに加わり、カスタム・コンバーターの開発とお客様対応を担当。その後、オーストリア、グムンデンの新本社で、RECOM Groupのテクニカル・ディレクタに就任。



※本連載は、RECOMが発行した「DC/DC知識の本 ユーザーのための実用的ヒント」(2014年)を転載しています。

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