修理を通して情報を入手! RCC電源IC「MAシリーズ」から学んだこと:Wired, Weird(2/2 ページ)
今回は、シーケンサやモータードライバー用の電源など、2次電源を生成する多種の機器に多用されている新電元工業の電源IC「MAシリーズ」を使った機器の修理の経験を報告する。
MA3000シリーズを使った電源基板
次はMA3000シリーズを使った電源基板の例だ。修理した基板を図3に示す。
図3はモータードライバーの電源部だ。MA3000シリーズのICはトランスの右側にある赤四角で示したICだ。MA2000シリーズを参考にしてテスターで部品を確認したが、図2の2ピンと1ピンの接続が違った。またAC100Vの電源では動作しなかったので、メーカーに資料開示を依頼した。入手できた資料を図4に示す。
図4の左は応用回路例で右は等価回路とピン番だ。やはり1ピンの回路が変わっていた。トランスから発生するサージの吸収方法が改善されていた。AC200V仕様のICだった。この資料のおかげで電源部の回路を動作確認でき、修理を終えられた。
最後はMA4000シリーズを使った電源基板
最後はMA4000シリーズだ。MA4000シリーズを使った電源基板を図5に示す。
図5はMA4000シリーズを使った電源の生成部だ。図5中央の赤四角で示した部分の放熱板に固定されている部品がMA4000シリーズのICだった。図2を基にテスターで確認したが、全く違う回路だった。早速メーカーへ問い合わせし、MA4000シリーズの資料を入手した。図6に参考回路図を示す。
![<strong>図6:入手したMA4000シリーズの資料の参考回路図</strong>[クリックで拡大]](https://image.itmedia.co.jp/edn/articles/2501/23/jn2025ww006.jpg)
図6:入手したMA4000シリーズの資料の参考回路図[クリックで拡大] 出所:新電元工業「スイッチング電源用ICパワーモジュール MA4000シリーズ アプリケーションマニュアル version.2」
図6はMA4000シリーズの参考回路例だ。メインのトランジスタはFETに代わっていた。ピン数は同じだが過電流検知の回路が追加されていた。特に3ピン、4ピンの回路が大きく変わり、安全面を配慮した回路になっていた。特にFETは過熱するとドレインとゲートが短絡し、その結果ドレインとソースも短絡するので、安全回路は必須だ。
MAシリーズは便利なRCC電源用のICだ。いろいろな電源の修理を通して、MAシリーズの情報を入手できたが、なぜか応用回路と等価回路は開示されていない。恐らく知的財産が絡んでいると思われた。このICを使った機器は多数使用されており、きちんとMAシリーズ回路を把握することが実際の修理には重要だった。
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