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プロセスエンジニアは地震発生時にどう動くのか――トラブル時の連携力と非常時対応:プロセスエンジニアの現場から(4) 半導体プロセスエンジニアの仕事内容(3)(2/2 ページ)

地震や停電などの災害を含め、トラブルや非常事態が発生した際に、どう動くかはプロセスエンジニアにとって極めて重要な仕事です。今回は、トラブルが発生した際、誰と連携し、どのように対応しているかを具体的に見ていきます。

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災害・非常時の初動と復旧

 半導体工場は、装置もインフラも精密に管理されています。そのため、地震や停電といった非常事態が発生すると、平常時とは異なる判断が次々と求められます。本章では、初動対応と復旧プロセスでの考え方を紹介します。

地震・停電などの初動対応

 地震が発生した直後は、まず人の安全確認が最優先です。そのうえで、安全防災部門や設備担当などが役割を分担し、装置や配管の異常、薬液や特殊ガスの漏えい有無などを確認していきます。

 プロセスエンジニアは担当工程の装置や仕掛かり品の状態把握を中心に関与します。安全防災部門や設備担当と役割を分担しながら、クリーンルーム内外の状況を把握していく流れが一般的です。

 担当工程のプロセスや仕掛かり品への影響を早期に把握できるのは、現場を知るプロセスエンジニアであるケースが多いです。その初動での情報提供が、迅速な復旧につながります。

 停電時には、関係部門と情報を共有しながら、主に次の項目を確認します。

  • バックアップ電源への切り替え状況
  • 担当装置の停止状態
  • 停電影響を受けた仕掛かり品(ロット)の状態

 中でも、仕掛かり品の状態把握は重要です。先の工程へ進められるか、再処理や廃棄などの対応が必要かを、関係部門と検討する材料になるためです。

復旧プロセスでの再稼働判断

 安全が確認できた後も、全ての装置を一斉に再稼働させるわけではありません。復旧には優先順位があります。

 まず、供給インフラ(超純水・特殊ガス・空調など)が正常な状態に戻っているかを、ファシリティ管理部門と共に確認します。インフラが安定していない状態で装置を動かすと、新たな品質トラブルを招きかねません。続いて、設備の安全性や生産への影響、工程間の依存関係などを踏まえ、再稼働の優先順位を決めていきます。

 なお、装置によっては、装置メーカーの立ち会いのもとで動作確認を行ってから再稼働させる場合もあります。地震による微細なずれや損傷は、目視だけでは分からない場合があるからです。

 再稼働後は、影響を受けた可能性のあるロットについて、品質保証部門と連携しながら、必要な確認や評価を行い、品質基準に沿って処置を判断します。地道な確認作業ではありますが、非常時だからといって基準を緩めるわけにはいきません。

 非常時は、通常業務以上に「今どこまで確認できていて、何が未確認なのか」を関係者へ正確に共有する必要があります。初動と復旧の各段階で確認する主な項目と連携先の例を、次の表にまとめました。

段階 主な確認事項 主な連携先
安全確認 人的安全の確認、装置・配管の異常有無 安全防災部門・建屋部門
薬液・ガス確認 薬液・特殊ガス系統の状態確認 設備担当・ファシリティ管理部門
インフラ復旧 供給インフラ(超純水・ガス・空調)の復旧状況確認 ファシリティ管理部門
装置復旧 装置の動作確認・再稼働条件 設備担当・装置メーカー
品質確認 影響ロット・仕掛かり品の品質確認 品質保証部門・生産管理部門

 冷静な安全確認と、スピードを求められる復旧判断。両者のバランスを取りながら関係者をまとめていく点も、プロセスエンジニアの重要な役割です。ただし、大規模災害では、こうした復旧作業が順番通りに進むとは限りません。

大規模災害では状況把握が復旧の第一歩

 大規模な災害が発生すると、安全確認が終わればすぐに装置の復旧作業が始まるとは限りません。私が経験した大きな地震では、工場のラインが停止している状況でも、現場のエンジニアはすぐに装置を立ち上げるのではなく、まず影響範囲の把握と絞り込みを優先していました。

 被害の全体像が見えないまま復旧を進めると、設備や供給インフラの異常を見落とす可能性があります。どこまで影響が及んでいるのかを把握する作業も、復旧に向けた重要なプロセスです。

 技術者側も、被害状況や復旧見通しをまとめて上層部へ報告する必要があります。緊急時には状況が刻々と変わるため、私が経験したケースでは、状況報告のための打ち合わせが1日に複数回開かれました。

 現場では、復旧作業を進めたい一方で、状況整理や報告にも時間を割かなければならない難しさがありました。しかし、工場全体の復旧方針を決めるには、現場からの正確な情報集約も欠かせません。

 さらに難しいのが、復旧の優先順位です。工場全体が停止している状況では、現場だけで復旧順序を決められるとは限りません。経営側の判断を受けて優先順位が決まる場合もあり、被害状況や事業への影響が明らかになるにつれて、その指示が変わるケースもあります。現場のエンジニアには、変化する優先順位に対応しながら、「どこまで確認できていて、何が未確認なのか」を正確に共有する力も求められます。

まとめ――「誰と組むか」を見極める力

 トラブル対応でも災害対応でも、プロセスエンジニアが「何でも屋」と呼ばれるのは、自分一人で全てを解決するからではありません。状況に応じて適切な専門家を見極め、連携しながら解決に導く力があるからです。

 平常時に培った「誰に、何を、どのタイミングで相談するか」という判断軸は、非常時にもそのまま生きてきます。工程・インフラ・非常時対応のいずれの場面でも、視野を自分の担当範囲だけに閉じない姿勢が、プロセスエンジニアの専門性を支えています。

 第1回から紹介してきたように、担当業務の幅広さや調整力の高さは、半導体プロセスエンジニアという仕事の大きな特徴です。周囲を巻き込みながら物事を前に進める力は、この仕事で十分に生きるスキルとなります。

⇒「プロセスエンジニアの現場から」連載バックナンバー一覧

著者プロフィール

鳥海五歩(とりうみ・ごほ)

千葉県生まれ。木更津工業高等専門学校電子制御工学科卒業。国内半導体メーカーにて立ち上げ・導入支援業務を経験後、国内大手半導体メーカーにて17年間、量産工場のフォトリソグラフィ工程に従事。生産技術、歩留まり改善、量産立ち上げなどを担当し、半導体業界で20年以上の経験を有する。


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