パワーMOSFET
パワーMOSFETとは、比較的大きな電力を扱えるMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)のこと。「ゲート」、「ソース」、「ドレイン」という三つの電極から構成されている。特徴は、従来のバイポーラ・トランジスタに比べて、スイッチング速度が高く、低圧領域(〜200V程度)においてオン抵抗(RDS(ON))が低い点にある。このため、現在では、スイッチング電源(AC-DCコンバータ)やDC-DCコンバータ、負荷スイッチなどで広く使われている。
ただし、耐圧が300〜400Vあたりからオン抵抗が急激に高くなるという欠点がある。従って、400V以上の中圧から高圧の領域ではバイポーラ・トランジスタの一種であるIGBT(Insulate Gate Bipolar Transistor)に主役の座を譲り渡している。実際に、インバータやモーター駆動などの用途ではIGBTが盛んに採用されている。
nチャネル品とpチャネル品がある
パワーMOSFETを選択する場合、まずはnチャネル品とpチャネル品のいずれかを選択しなければならない(図1)。両者の違いは電流の流れる向きにある。nチャネル品では、ドレイン電極からソース電極に向かってシンク(吸い込む)する方向に電流が流れる。一方、pチャネル品の電流の向きは、ソース電極からドレイン電極にソースする(吐き出す)方向である。従って、DC-DCコンバータへの適用を想定した場合、ローサイド・スイッチにはnチャネル品、ハイサイド・スイッチにはpチャネル品が向く。さらに、リレーの置き換え用途には、pチャネル品が適していると言えるだろう。
なお、nチャネル品とpチャネル品のスイッチング特性を比較すると、一般にnチャネル品の方が優れている。この理由は、スイッチング動作に司るキャリアがnチャネルでは電子だが、pチャネルでは正孔であるためだ。
次に考慮すべき特性は、耐圧と最大ドレイン電流である。耐圧とは、ドレイン電極とソース電極の間に印加できる最大電圧(VDS)のことだ。耐圧以上の電圧を印加するとパワーMOSFETは壊れてしまう。そこで、パワーMOSFETを接続する配線にかかる電圧の3〜5倍に耐えられるパワーMOSFETを選択するのが一般的だ。例えば、5Vの配線であれば、20V耐圧品、もしくは30V耐圧品を使う。最大ドレイン電流(ID)とは、ドレイン電流を介して流出、もしくは流入する電流の最大値である。この値が高ければ高いほど、大きな電力を扱えるようになる。
パワーMOSFETにおけるトレードオフ関係
このほか、パワーMOSFETの重要な特性としては、オン抵抗(RDS(ON))と全ゲート電荷量(Qg)が挙げられる。オン抵抗とは、パワーMOSFETがオン状態のときの抵抗値。全ゲート電荷量とは、パワーMOSFETをオンからオフ、オフからオンへ切り替える際に、ゲート電極に注入する必要がある電荷量である。
いずれの特性とも、小さい方が高性能と言える。しかし、この二つの特性はトレードオフの関係にある。パワーMOSFETの素子面積を大きくすれば、オン抵抗は小さくなるが、全ゲート電荷量は増大してしまうからだ。例えば、DC-DCコンバータでは、オン抵抗が高ければ導通損失が、全ゲート電荷量が大きければスイッチング損失が増えてしまう。
そこで現在、パワーMOSFETベンダーでは、オン抵抗と全ゲート電荷量の積であるFOM(Figure of Merritt)を低減する動きが急だ。つまり、オン抵抗と全ゲート電荷量の両方を削減できるパワーMOSFETの開発である。具体的には、トレンチ電極の導入などで素子構造を改善し、FOMを低減する取り組みだ。このほか、材料をSi(シリコン)から、GaN(窒化ガリウム)やSiC(炭化シリコン)といった次世代材料に変更する動きも活発である。
テキサス・インスツルメンツのインタフェース製品ラインアップ
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アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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