コンスタント・オンタイム制御方式
コンスタント・オンタイム(COT:constant on time)制御方式とは、DC-DCコンバータにおいて出力電圧を安定化するフィードバック回路の制御方式の1つ。大きく分類するとヒステリシス制御方式(リップル制御方式)に含まれる。
最大の特徴は、高速な負荷応答特性を実現できることにある。マイクロプロセッサやDSP、FPGA、ASICなどでは、消費電力を低く抑えるために、動作モードを細かく変更している。例えば、フル稼働モードから低消費電力モードに切り替えたり、待機モードからフル稼働モードに切り替えたりする。こうしたモード切り替え時には、マイクロプロセッサやDSP、FPGA、ASICなどに供給する電流、いわゆる負荷電流が大きく変化する。その際に、出力電圧も大きく変動し、場合によっては許容範囲を外れてしまいマイクロプロセッサなどが誤動作を起こすことがある。コンスタント・オンタイム制御方式を使えば、出力電圧の変動を最小限に抑えられる。マイクロプロセッサなどの誤動作を未然に防げる。
下限のしきい値のみを定める
図1 コンスタント・オンタイム制御方式
回路構成図と、出力電圧/PWM信号波形である。下限のしきい値を定め、それに達すると、スイッチング素子をオンに切り替えるPWM信号を出力する。そして、オンの状態を一定時間続けた後に、オフに切り替える。
コンスタント・オンタイム制御方式は、冒頭で述べた通り、ヒステリシス制御方式の一種である。従って、フィードバック・ループにエラー・アンプ(誤差増幅器)はない。その代わりに、コンパレータ(比較器)を使う。違いは、出力電圧の検出方法にある。ヒステリシス制御方式は、出力電圧の上限しきい値と下限しきい値を定めておき、出力電圧が実際にこれらの値に達したときに、スイッチング素子のオン/オフを切り替える。
一方のコンスタント・オンタイム制御方式では、出力電圧の下限しきい値だけを設定する(図1)。上限しきい値は定めない。その代わりに、オン時間を固定するわけだ。具体的には、出力電圧が下限しきい値に達すると、スイッチング素子がオンに切り替わる。そして、あらかじめ定めておいたオン時間が経過するとスイッチング素子は自動的にオフになる。こうして、出力電圧を安定化するわけだ。
リップル注入と組み合わせる
コンスタント・オンタイム制御方式は現在、多くの半導体メーカーがこぞって採用する「人気の」制御方式と言える。米テキサス・インスツルメンツ社では、降圧型DC-DCコンバータ制御IC「LM3150」で、この制御方式を採用している。
このICでは、コンスタント・オンタイム制御方式に、リップル注入と呼ぶ技術を組み合わせている。一般に、ヒステリシス制御方式では、出力電圧に現れるリップル成分を利用する。このため、従来は等価直列抵抗(ESR:equivalent series resistance)が比較的大きなコンデンサを、出力部に使う必要があった。つまり、ESRが小さい積層セラミック・コンデンサは使えなかったわけだ。
電子機器を小型化するには、積層セラミック・コンデンサを使いたい。こうした要求に応えるために登場したのが、リップル注入方式である。出力電圧にリップル成分を強制的に注入する技術である。この技術を採用すれば、出力コンデンサに積層セラミック・コンデンサを使うことが可能になる。
なお、コンスタント・オンタイム制御方式には、スイッチング周波数が変動するという問題がある。このため、ノイズ対策が難しくなる可能性が高い。そこで、LM3150では、オン時間を微妙に変化させて、スイッチング周波数を一定に保つ工夫を盛り込んでいる。
LM3150コンスタント・オンタイム降圧型同期整流コントローラ
LM3150はコンスタント・オンタイム(COT)制御の降圧型同期整流コントローラです。入力電圧をフィード・フォワードすることにより、スイッチング周波数を一定に保ちます。COT方式は位相補償なしに優れた負荷応答特性を実現します。
テキサス・インスツルメンツの電源ICラインアップ
提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日
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