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市場が広がるSDI(1) 規格の生い立ちとその概要に迫る【ビデオ講座】アナログ設計の新潮流を基礎から学ぶ

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【ビデオ講座】市場が広がるSDI(1) 規格の生い立ちとその概要に迫る (クリックで動画再生)


 SDI(Serial Digital Interface)という高速シリアル・インタフェース規格を御存知だろうか。恐らく、馴染みが深いエンジニアは、そう多くはいないはずだ。なぜならば、SDIは、業務用ビデオ機器などに向けた規格だからである。テレビ局やテレビ中継現場、劇場などで、ビデオ信号を伝送する用途で使われている。従って、民生機器や、モバイル機器、産業機器などのエンジニアにとっては、馴染みが薄い高速シリアル・インタフェース規格だったわけだ。

 しかし、こうした状況は、変化しつつある。最近になって、SDIの市場が大きく広がっているからである。新たに対象となっているのは、セキュリティ機器や、メディカル機器、デジタル・サイネージ、テレビ会議システム、シアター(映画館)などである。一部のエンジニアだけが知っていれば良かったのは、もはや過去の話である。今後は、規格の内容を把握し、それを使いこなすことが求められるエンジニアの数が飛躍的に増えていく見込だ。

SDIの登場は1989年

図1
図1 白黒テレビのアナログ映像信号
2次元の映像を左から右、上から下へ走査し、各点の明るさを電気信号に変換する。この電気信号と同期信号を重畳することでアナログ映像信号とする。

 SDI規格の説明を始める前に、まずはビデオ信号をアナログ信号として伝送していた時代をおさらいしていこう。

 例えば、白黒テレビの時代は、2次元の映像を左から右へ、上から下へと走査(スキャン)して各点の明るさの情報を電圧値に変換し、これに同期信号を重畳してアナログのビデオ信号として伝送していた(図1)。伝送するアナログ・ビデオ信号の振幅は1Vで、そのうち映像信号が714mV、同期信号が286mVを占める。


図2
図2 カラー・テレビのアナログ映像信号
RGB信号から、輝度を表すY信号と色差信号を表すCb信号とCr信号を作成する。Cb信号とCr信号には副搬送波で変調をかけるが、副搬送波自体は送信しない。そこで、この副搬送波を再現するために同期信号の直後にカラー・バースト信号を挿入する。これがカラー・テレビのアナログ映像信号となる。

 カラー・テレビでも基本的に考え方は同じだ。2次元の映像を走査することでアナログ・ビデオ信号を生成する点に違いはない。ただし、カラー情報の伝送が必要な点が違う。そこで、R(赤)、G(緑)、B(青)の信号から、輝度信号のYと色差信号のCbとCrという3つの信号を作成して同時に伝送する(図2)。Cb信号とCr信号については、副搬送波で変調をかけるが、副搬送波自体は送信しない。そこで、この副搬送波を再現するために、同期信号の直後にカラー・バースト信号を挿入している。

 ここまでがアナログ伝送の時代の説明だ。ナショナル セミコンダクター ジャパンでSDI関連製品のマーケティングを担当している三田喜久夫(みた きくお)氏によると、「デジタル方式の映像信号伝送が実用化されたのは1986年のこと。ある国内メーカーがコンポーネント・デジタル方式のビデオ・テープ・レコーダー(VTR)を製品化したのが最初である」という。このコンポーネント・デジタル方式は、パラレルのデジタル信号を採用していた。伝送用のケーブルが複数本必要になる。このため、使い勝手が良いとはいえなかった。


図3
図3 映像信号のデジタル化の流れ
Y信号とCb信号、Cr信号をそれぞれA-Dコンバータで10ビットのデジタル信号に変換し、同期信号とともにマルチプレクサで10ビットのパラレル信号に集約する。その後、パラレル・シリアル変換回路でシリアルのデジタル信号に変換する。

 そこで登場したのが、シリアルのデジタル信号を採用したSDIである。1989年のことだ。信号処理の流れを図3に示す。YとCb、Crの各信号をA-Dコンバータで10ビットのデジタル信号に変換し、同期信号とともにマルチプレクサで10ビットのパラレル信号にまとめる。その後、スクランブラーを通り、パラレル・シリアル変換回路でシリアルのデジタル信号に変換される。

3つの物理層規格を用意

図4
図4 SDI規格とは
SDI規格は大きく3つに分けられる。SDTV向けとHDTV向け、プログレッシブHDTV向けである。

 SDI規格を策定したのは、「SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)」という業界団体だ(図4)。この業界団体で、さまざまなテレビ放送方式に向けた規格を策定している。

 SDI規格は、大きく分けると3つに分けることができる。1つめは標準画質のテレビ(SDTV:Standard Definition TV)に向けた「SMPTE259M/344M」。2つめは高精細画質のテレビ(HDTV:Hi-Definition TV)に向けた「SMPTE292M」。3つめは、プログレッシブHDTVや3D HDTV、Deep Color HDTV等に向けた「SMPTE424M」である。


図5
図5 さまざまなSDTV規格に対応する上位層
SDI規格では、NTSCやPALなどのさまざまなSDTV規格に対応するために、物理層の上に位置する上位層の仕様を数多く策定している。

 いずれの規格も四つの特徴がある。第1に、非圧縮であること。従って、非常に高い画質が得られる。第2に、圧縮処理がないため遅延時間が極めて短いこと。第3に、長距離伝送が可能なこと。第4に、アナログ信号を伝送の際に使っていた同軸ケーブルをそのまま使えることである。データ伝送速度は、SDTV向け規格が最大で540Mビット/秒、HDTV向け規格が1.485Gビット/秒、もしくは1.4835Gビット/秒。プログレッシブHDTV向け規格が2.97Gビット/秒、もしくは2.967Gビット/秒である。


図6
図6 HDTVに向けた上位層
HDTVに向けたSDI規格でも、さまざまな解像度に対応するために、上位層の仕様を用意している。

 ただし、上記の3つの規格は、あくまで物理層の仕様を定めたものだ。例えば、SDTVの領域の中には、NTSCやPALといった地域ごとで異なる放送規格や、横長(ワイド・フォーマット)放送の放送規格などがある。こうした規格に対しては、物理層の上位層で対応している。具体的には、NTSCコンポジット・ビデオ信号であれば「SMPTE244」、コンポーネント・ビデオ信号であれば「SMPTE125M」、ワイド・フォーマットのビデオ信号であれば「SMPTE267M」という規格を用意している(図5)。物理層とその上位層を組み合わせることで、SDTVのさまざまな規格に対応できるわけだ。

 HDTVについても同様である。HDTVには、720pや1080iといった解像度が異なる規格がある。これらについては、HDTV向け物理層規格であるSMPTE292Mの上位層に当たる「SMPTE296M」や「SMPTE274」という規格で対応している(図6)。

ナショナル セミコンダクターのSDI/業務用放送ビデオ・ソリューションの詳細は:

http://www.national.com/jp/interface/sdi/index.html



提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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