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超小型電源モジュール(2) オンライン設計支援ツールで使いこなす【ビデオ講座】アナログ設計の新潮流を基礎から学ぶ

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超小型電源モジュール(2) オンライン設計支援ツールで使いこなす (クリックで動画再生)


 米テキサス・インスツルメンツ(TI)社は2011年10月に、超小型の電源モジュール「SIMPLE SWITCHER® ナノ・モジュール」の製品化を発表した。この電源モジュールは、降圧型DC-DCコンバータ・モジュールである。外形寸法は2.5mm×3.0mm×1.2mmと小さいにもかかわらず、最大1Aと大きな出力電流を取れることが特徴だ。変換効率はピーク値で95%程度が得られる。

 さらに、出力電圧リップルが低く、放射雑音(EMI)も低いというメリットを兼ね備えている。従って、出力電圧リップルやEMIを低く抑えたいために、従来はLDOレギュレータICを使っていたユーザーがこの電源モジュールに切り替えれば、出力電圧リップルとEMIはそのままに変換効率を大幅に高められるわけだ。しかも、インダクタを内蔵しているため、電源回路設計はほとんど不要。購入して実装するだけでDC-DCコンバータ回路を構成できる。つまり、LDOレギュレータICと同じ手軽さで取り扱うことが可能である。

 前編では、この電源モジュールの特徴や、小型化を可能にしたポイントなどについて解説した。その後編となる今回は、同社の、オンライン設計支援ツール「WEBENCH® Power Designer」を利用して、ナノ・モジュールの特性をさらに深く掘り下げていく。

外付け部品はわずかに5個

図1
図1 オンライン設計支援ツール
WEBENCH Power Designer」の入り口
日本テキサス・インスツルメンツのホームページから、利用することが可能だ。 SIMPLE SWITCHER ナノ・モジュールは、出力電圧リップルやEMIに敏感な携帯型医療機器やセンサー計測機器などに向けたものだ。そこで今回は、携帯型医療機器に搭載するASICに電力を供給するLDOレギュレータICの置き換えを想定し、実際にオンライン設計支援ツールを使って設計作業を行ってみる。

 オンライン設計支援ツールは、TI社のホームページの右端に設けてあるウインドウから利用できる(図1)。このウインドウで「電源」のタブをクリックする。そして、入力電圧の最小値に3Vを、最大値に5V、出力電圧に1.2V、出力電流に1.0Aを入力する。周囲温度は初期設定の30℃のままで、負荷が単一時の「設計を開始」ボタンを押す*1)。

*1)初めてご利用いただく方は、ユーザー登録が必要になります。


図2
図2 最適な電源ICや電源モジュールを絞り込む
左上のオプティマイザーを使って、最適な電源ICや電源モジュールを絞り込む。右下の表に、候補となる電源ICや電源モジュールが表示され、その中から最適なものを選択することで、具体的な設計作業に取りかかることができる。

 すると設計が始まり、すぐに設計結果が表示される(図2)。設計対象を携帯型の医療機器としたため、最も気になるのは実装面積だろう。そこで、画面左上のオプティマイザーを「電源占有面積」に合わせる。すると、電源占有面積は65mm2、部品コストは1.95米ドル、効率は78%と求まった*2)。この設計結果で利用している電源IC、もしくは電源モジュールは、右下の「推奨部品」の欄において緑色でハイライトされている「LMZ10501」である。これはナノ・モジュールの1A出力品だ。

*2) 「WEBENCH Power Designer」では、使用する電子部品のコストや性能を頻繁にアップデートしているため、同じ計算結果が得られない場合があります。


図3
図3 SIMPLE SWITCHER ナノ・モジュールを使った電源回路例
外付け部品は、入力コンデンサ、出力コンデンサ、抵抗分割器を構成する2つの抵抗、ノイズ除去用コンデンサの5つだけである。このため、プリント基板上の実装面積を小さく抑えられる。

 ここで「設計を開く」をクリックすると回路図などが表示される(図3)。部品点数は極めて少ない。電源モジュールを除けば、わずかに5個である、具体的には、入力コンデンサと出力コンデンサ、出力電圧設定用の抵抗分割器、ノイズ除去用のコンデンサである。このため、実装面積が65mm2と小さいわけだ。

 計算によって求めた変換効率は78%である。ナノ・モジュールでは、ピーク値に95%程度の効率が得られるはずだ。この約17%の差は何に起因するのだろうか。最大の理由は、入力電圧と出力電圧の設定値にある。ピーク値である95%程度が得られるのは、入力電圧が3.6Vで出力電圧が3.3Vという入出力間電圧差が小さいケースに限られるで。今回想定したのは、入力電圧が5Vで出力電圧が1.2Vと、入出力電圧差が比較的大きな場合だ。このため、変換効率が低くなってしまう。


図4
図4 「動作値」の設定を利用して再計算
「動作値」ページでは、動作入力電圧や負荷電流を設定し直すことで、再計算を実行できる。例えば、入力電圧を5Vから3.3Vに変更して、変換効率を再計算することができる。

 なお、入力電圧が3.3Vの場合は、当然ながら、変換効率が若干高くなる。入力電圧が3.3Vのときの変換効率を求めるには、画面上部の「動作値」ボタンをクリックすればよい。そして、表示された画面の動作入力電圧のボックスに3.3Vを入れた後に「再計算」ボタンを押す(図4)。こうすれば3.3V入力で、1.2V出力のときの変換効率が求まる。再計算の結果は80.7%だった。

 いずれのケースにせよLDOレギュレータICを使う場合に比べれば、変換効率は大幅に高まる。「変換効率が大幅に高まれば、その分、発熱量が減る。放熱対策が非常に楽になる」(日本TIでナノ・モジュールのマーケティングを担当する山田浩二氏)。

出力電圧リップルは3mVと小さい

図5
図5 出力電圧リップルのシミュレーション結果
出力電圧リップルは、±2m〜3mV程度に抑えられていることが分かる。

 それでは次に、SIMPLE SWITCHER ナノ・モジュールの特長である、低い出力電圧リップルについて、実際にどの程度の値が得られるかを確認する。出力電圧リップルを求めるには、シミュレーション機能を使う。画面上部の「シミュレーション」ボタンを押すと、設定画面が表示される。ここで、ステップ1の「シミュレーション・タイプを選択」において「Steady State」を選び、ステップ2の「新しいシミュレーションを開始」ボタンを押す。するとシミュレーションが始まり、長くても数分後に、画面右側にシミュレーション結果が表示される。

 シミュレーションで求まった出力電圧リップルの大きさは、ピーク・ツー・ピーク値で2m〜3mVである(図5)。「この大きさであれば、LDOレギュレータICとほぼ同じ。出力電圧リップルに敏感な電子機器でも安心して使うことが可能なレベルだ」(山田浩二氏)という。

 次に、負荷応答特性について、シミュレーション機能を使って確認する。前編におけるナノ・モジュールの解説では、負荷応答特性には特に言及しなかった。しかし、ASICなどに電力を供給する用途では、負荷応答特性が不十分だと誤動作を招く危険性がある。このため、電子機器を設計する際には、確認作業が欠かせない。負荷応答特性を求めるには、ステップ1の「シミュレーション・タイプを選択」において「Load Transient」を選び、ステップ2の「新しいシミュレーションを開始」ボタンを押せばよい。すると、画面右側にシミュレーション結果が表示される。

図6
図6 負荷応答特性のシミュレーション結果
負荷応答時に発生する電圧変動幅は±20mV強と小さい。

 シミュレーションにより求まった負荷応答特性は±20mV強である(図6)。出力電圧である1.2Vの±5%に相当するのは±60mVだ。従って、±20mVの変動範囲であれば、ASICを問題なく駆動できると言えるだろう。

 最後に、熱特性について言及する。「WEBENCH Power Designer」には、熱特性に対するシミュレーション機能が用意されている。これを利用すれば、周囲温度、冷却ファンの風向きや風量、熱源の有無などを設定して、電源モジュールの発熱プロファイルを求めることができる。しかし、現時点(2011年12月末)では、ナノ・モジュールは、熱特性のシミュレーション機能に対応していない。「近い将来、対応するはず。少し待っていただきたい」(同氏)。

 ただし、「動作値」ボタンをクリックし、接合部温度「IC Tj」の値を見れば、電源モジュールの発熱量を把握できる。3.3V入力、1.2V/1.0A出力のケースにおけるIC Tjは64.3℃である。周囲温度は30℃であるため、温度上昇分は34.3℃になる。従って、周囲温度が85℃の場合でも、接合部温度は119℃にしか達しないため、問題なく使えると判断できる。



提供:日本テキサス・インスツルメンツ株式会社
アイティメディア営業企画/制作:EDN Japan 編集部/掲載内容有効期限:2013年3月31日

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